中小規模の卸売業・小売業者が抑えるべき在庫管理のポイント

#在庫管理#業務効率化#各論
中小規模の卸売業・小売業者が抑えるべき在庫管理のポイント

卸売業・小売業にとって在庫を適切に管理する在庫管理の重要性は今更説明するまでもないと思いますが、中には目的と手段が逆となって管理している企業も少なくありません。 他の回のコラムで度々言及していることですが、何をやるにしても先ずは目的を明確にし、現状を把握するとともに現状と目的のギャップは何かを理解する、その上で打ち手(施策)を考えるべきです。とはいえ、在庫管理には多くの時間と手間がかかるため、経営資源に限りのある中小規模の事業者では一層効率的な管理が求められるでしょう。 今回は、如何に効率的に在庫を管理していくか、そのポイントについて説明します。

卸売業・小売業にとっての在庫管理とは何か?

そもそも「在庫」とは何か?について定義しましょう。卸売業・小売業にとっては「商品」ですが、製造業にとっては製造工程により「原材料」「部品」「仕掛品」「半製品」「製品」等に分類されます。いずれも会計上の「資産」に計上されます。今回は卸売業・小売業にとっての在庫管理ですので、以降は在庫=商品として定義します。

次に在庫管理とは何か?について説明します。「資産である在庫を適切に管理すること」に尽きますが、卸売業・小売業にとっての在庫管理とは何かについてもう少し具体的に説明すると、「必要な商品を、必要な時に、必要な量を、必要な場所へ供給できるように、販売等の他の活動と照合して適切に管理すること」だといえます。これがどれだけ「言うは易く行うは難し」なのか、在庫管理を担当されている方なら誰もが感じるところでしょう。それでは在庫管理とは在庫を適切に管理することだけが目的なのでしょうか。在庫を適切に管理できるとどのような効果があるのか、下記に列挙します。

  • 販売機会を逃さないので、売上げ増加につながる
  • 余剰在庫を持たない分、管理コストがかからないので利益増加につながる
  • 仕入から販売までの現金循環サイクル(キャッシュ・コンバージョン・サイクル(CCC)といいます)が適正化されるので、キャッシュフローが改善する
  • 余計な在庫を持たず、CCCも適正化されるため在庫の品質が安定する

つまり、在庫管理とは収益・利益の向上、キャッシュフロー改善、品質改善につながるとても重要な活動だといえます。

やはり大事な現状分析

さて、在庫管理の目的と効果を認識したところで先ずは何からスタートさせるべきか?やはり大事なのは現状を把握することですが、在庫管理の現状分析では大きく2つの観点があると考えます。

  • 業務にスポットをあてた分析
  • 在庫そのものにスポットをあてた分析

「業務にスポットをあてた分析」とは、他の回のコラムで何度か紹介した業務フローを用いた業務の視覚化を指します。在庫管理はもちろんのこと、販売管理等の他の関連する活動とどう紐づいているのか?を視覚化しましょう。なお、作成イメージは「中小企業が挫折する「マスタ登録」という名の鬼門」を参考にしていただければと思います。また、個々の業務を視覚化した上でどれだけの工数(業務時間)がかかっているか、ざっくりでかまいませんので、担当者にヒアリングする等して一覧化しましょう。上記の作業はとにかく大変ですが、目的・効果が経営に直結する内容なだけに、時には外部の力も借りながら根気よく進めてほしいところです。

次に「在庫そのものにスポットをあてた分析」を説明します。下記はいずれも在庫分析の定石ともいえるフレームワークなので、はじめて知ったという方はこの機会に実践してみましょう。

ABC分析(パレート分析)

売上に貢献する在庫を優先的に管理することを目的に在庫の優先順位を設定する方法です。具体的には在庫別の出荷量や売上げを調査し、全体に占める割合が多い順にA、B、Cとランクを付けて、Aは在庫が切れないように発注、Cは在庫が切れてから発注、Bはその間で都度様子を見て発注等の発注基準を定めていきます。

在庫回転率分析

システムを導入する前に考えておくべきポイント」で例として在庫回転数を説明しましたが、在庫回転数(率)が高い在庫ほど、算定期間内に売れている商品ということになりますので、これもABC分析のように在庫の種類によって優先順位をつけるのに効果的な分析方法といえます。

上記はあくまで売上への貢献度を図るフレームワークですが、在庫からどの程度利益を得ているのかを図る「交差(交叉)比率分析」といった利益への貢献度を図るフレームワークもありますので合わせて分析することをおすすめします。

「効率化」は「仕組み化」である

現状分析によりどの業務が効率/非効率なのか?どの業務に時間(コスト)をかけているのか?どの在庫(商品)が売れている/いないのか?等が見えてきたらいよいよ打ち手(施策)の検討です。結論から申し上げますと、人力やExcel等の表計算ソフトでは限界がありますので、販売管理等と連動した在庫管理システム、WMS、ERPといったシステムを導入し、またバーコードやICタグを読み取るハンディといったマテハン機器と組み合わせて少ない人員、時間で効率的に管理ができる仕組み化を構築することが最も良い選択だと思います。一方で、非システム領域についてもやり方次第で如何様にも効率化を図ることができる打ち手もありますので、代表的な打ち手を下記に記載します。

  • 在庫管理に関するKPIを設定・管理します。KPIの上位概念であるKGIは「利益の増加」に設定し、さらに利益の増加の要因である「売上高の増加」と「コスト(売上原価・販管費)の削減」の2つに分けます。売上高の増加とコストの削減がそれぞれどのような指標で構成されるかがまさにKPIなのですが、在庫管理における代表的なKPIは在庫別の適正在庫、回転数(率)、交差比率、発注・納品のリードタイム等です。KPI自体をシステムで管理できれば一番よいですが、財務数値からも分析可能なのでKPIと合わせてKSFを設定しておけばExcelでも管理・分析が可能となります。 在庫管理で最も工数のかかる業務は庫内のピッキング作業にあるため、在庫の位置を固定する、若しくは在庫管理システムやWMSを導入して位置を固定せず柔軟に管理します。
  • 在庫管理で最も工数のかかる業務は庫内のピッキング作業にあるため、在庫の位置を固定する、若しくは在庫管理システムやWMSを導入して位置を固定せず柔軟に管理します。
  • 在庫の先入れ先出しを徹底するため、上記のロケーション管理の他、在庫に目印をつけます。バーコードやICタグ等を在庫に設置すれば、ハンディで読み取り効率的に管理することが可能です。

その他にも、当たり前ですが「倉庫内を整理整頓してきれいな状態にしておきましょう」とか、「マニュアルを作成して周知徹底させましょう」とか考えつく打ち手はあるかと思います。しかし、それらができなかったからこそ多くの中小規模事業者は頭を抱えているでしょうし、社員への意識改革はそう簡単にはいかないでしょう(意識改革が出来れば一番良いのは言うまでもありませんが)。したがって、意識改革に頼らずシステムや機器の力を借りて仕組み化してしまい、社員の意識にかかわらずやらざるを得ない状態にしておくことが効率化への近道だと考えます。

まとめ

在庫管理の目的を達成しその効果を存分に享受するには、地道な現状分析が不可欠であり、システムや機器の導入によって、全体を仕組み化することが重要です。これらの工程はいずれも膨大且つ時間のかかる作業ですので、社内での完遂が難しければ外部の専門家に調査・分析を依頼したり、他社事例を参考にしてみたり等の工夫も必要ですが、在庫管理の目的や目標を明確にし、何のためにこうした取り組みをやるのかについては、他でもない当事者が考え抜くべき内容だと思います。

この記事を書いた人

ライター
株式会社キャム 取締役COO

下川 貴一朗

証券会社、外資・内資系コンサルティングファーム、プライベート・エクイティ・ファンドを経て、2020年10月より取締役CFOとして参画。 マーケティング・営業活動強化のため新たにマーケティング部門を設立し、自ら責任者として精力的に活動している。

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