属人化 (ぞくじんか) とは? 属人化が悪いといわれる理由と解消する方法を解説
属人化とは、業務の中で当事者しか仕事の進め方がわからないということを意味します。
属人化は言われているほど悪くないという意見もありますが、企業の規模や状況によっても異なります。
こちらの記事では属人化を解消した方が良い場合の方法などもご紹介します。
目次
属人化 (ぞくじんか) の意味とは
「属人化」の読み方は「ぞくじんか」です。
属人化とは、企業内の業務が「その人でなければできない」、「その人でなければ分からない」状態になっていることを表します。
属人化していると、その従業員がいないと業務が進まなくなってしまうため、経営に大きな悪影響を与えることが多いものの、短期的なプロジェクトなどの場合はあながち悪くないとも言われています。
属人化の対義語は標準化で、だれでも業務を進めることができる状態を表します。
属人化と専門化の違い
専門化が属人化の原因となることも多いですが、決定的な違いは技術力を高めるか、情報共有ができているかということになります。
属人化はその業務が専門的かどうかにかかわらず他者と共有できていない状態を表しています。
専門化はある業務に対しての技術力を高めていくことを表すため、その過程で情報共有を行っていくことは必須となるでしょう。
属人化とスペシャリストの違い
属人化とは、業務が一個人に集中してしまう状態を指す言葉ですが、スペシャリストは特定の分野において高度な技術を持つ人物を指す場合に使われます。
また、専門家と混同されがちですが、経験年数やマネジメントスキルを兼ね備えている場合を専門家と言うのが一般的です。
スペシャリストは専門的な知識や技術を持つ人物。その個人に業務を依存すると属人化の問題が生じるというのが適切な解釈でしょう。
属人化の対義語は標準化
属人化の対義語として「標準化」があります。
標準化は、業務や情報の取り扱いに一定の基準やルールを適用することを指し、これによって業務の進行や情報のアクセスが特定の個人に依存しないようになります。
標準化された業務や情報は、どの担当者が関与しても同じ結果や品質を期待できる特徴があります。
属人化の何が悪い?
業務や情報に関する知識が特定の個人に集中してしまうことで、その個人が休暇や退職すると業務が停滞し、企業の生産性に大きな影響が出てしまいます。
また、代わりのスタッフを急遽用立てても準備不足であったり、経験不足が招く業務品質の低下も考えられます。
このように、属人化は組織の業務効率と品質に悪影響を及ぼす可能性があるため、業務が属人化する前に対策をしておく必要があります。
業務の属人化における具体例
営業情報の属人化
長年勤務するベテラン営業マンが顧客情報や過去の商談履歴を全て自分のノートPCや手書きのノートに記録していました。
ある時、この営業マンが急に長期休暇を取ったとき、他の営業スタッフがその顧客(クライアント)をフォローできず、トラブルねと繋がってしまいました。
経理業務の属人化
特定の経理担当者だけが会社の経理処理方法や月次決算の手順、税務申告のプロセスを掌握していました。
その担当者が退職した後、引き継ぎが不十分で後任者は想定以上に時間がかかり、決算作業に遅れが生じ税務申告の締め切りに間に合わない事態に陥りました。
ITシステムの属人化
企業内で使用している特定のシステムに関してエンジニアを専任で1人しか配置していませんでした。
ある日、社内でシステム障害が起こった際にそのエンジニアに大きな負担がかかり復旧作業が大幅に遅れました。
属人化の原因
属人化の原因として、以下のようなものが挙げられます。
業務の専門性が高い
専門性の高い業務の場合には、他の従業員が代わりに行おうとしても意味が分からないことがあります。
自分にしかできない仕事にやりがいを感じて他者に任せないというケースも属人化に拍車がかかるケースとなります。
情報共有されていない
業務に関する情報を共有する時間がないというのも属人化の大きな原因の一つです。
よくあるのは、他の人に時間をかけて説明してやってもらうくらいなら、自分でやった方が早いというような例です。
加えて、共有しようにも仕組み・マニュアルなどが整っていないケースも多く見られます。
企業内の断片的なデータを個人間で共有するのは至難の業ですし、効率が悪い方法です。
属人化のメリット・デメリット
属人化はデメリットばかりと思われがちですが、メリットもあります。両方の側面から見た属人化を確認していきます。
属人化のメリット
企業の規模が小さい場合などは特に、わざと属人化した方が業務効率がアップする場合があります。
一人一人の特性に合わせた配置により、業務を任された従業員のモチベーションがアップするからです。
属人化のリスクとデメリット
一般的に属人化が進むとデメリットも増えてきます。
やはりその人にしかできないという仕事が増えれば、その人が休職や人事異動、退職してしまった場合、業務スピードが極端に落ちてしまう可能性があります。
また、金銭にかかわる業務の場合はブラックボックス化することで不正が行われやすくなります。
企業の今後の成長を考える上では、全社でのナレッジの共有が不可欠となりますが、属人化が進んでいるとそれも難しくなります。
組織の業務効率と業務品質の低下
属人化が進んでしまっていると、新しいメンバーがその業務を担当する場合業務の品質が低下する可能性があります。
また、特定の個人に業務が集中してしまうと、その個人の能力や時間の制約により、業務の効率が低下することも考えられます。
それを防ぐには、新しい担当者が適切な教育やトレーニングを行い、一定のスキルを身に着けておく必要があります。
社内の風通しの悪化
業務や情報が特定の個人に依存してしまうと、情報の共有が妨げられることがあります。
これにより、社内のコミュニケーションが困難になり風通しが悪化してしまい重要な情報が共有されないなど、業務に支障をきたす場合があります。
”属人化”が退職理由になりうる
属人化が進むと、その業務を担当する個人に過度なプレッシャーや負担(休めない・代わりがいないなど)がかかることが考えられます。
その結果、過労やストレスから休職や退職を考える従業員が増える可能性が高まります。
また、新しく担当になる従業員にしても、属人化されてしまった業務のせいで他の業務を学ぶ機会が制限され、キャリアアップの機会が失われると感じて退職を考えることも予想されます。
属人化が悪くない場合もある!?
属人化は組織の業務効率や情報共有に悪影響を及ぼす可能性があるため、一般的には避けるべきとされています。
しかし、すべての状況で属人化が悪いとは限りません。
属人化のメリットとデメリットのバランス
属人化には確かに一定の利点が存在します。
特定の個人が業務を担当することで、その個人の経験やノウハウを最大限に活かすことができ、これによって短期的には業務の効率や品質が向上することが期待されます。
ただし、長期的には情報の共有が不足したり業務の停滞が生じたりするなどデメリットも考えられます。
そのため、属人化の利点とデメリットのバランスを取ることが大切です。
どのような状況で属人化が許容されるのか
属人化が許容される状況は、特定の業務が高度な専門知識や技術を必要とする場合や、短期的なプロジェクトで素早い意思決定や柔軟な適応が要求される場合などが考えられます。
また、新しい技術や手法を導入する初期段階では技術や手法に精通した個人が業務を担当することも、一時的な属人化として受け入れられることがあります。
ただし、これらの状況でも中長期的には情報の共有や業務の標準化を進める必要があることを忘れてはいけません。
属人化を避けるべき業務
それでは属人化をできるだけ避けなければならない業務をご紹介します。
バックオフィス業務
経理や会計、人事など企業経営の基本となる業務に関しては、むしろ標準化を進める必要があります。
担当者によってやり方が変わるといった場面が増えると無駄な時間ができ、日々の業務が滞ってしまいます。
また、経理などは不正を防止するという観点からも、第三者が確認しやすい環境が大切です。
営業や顧客対応
営業の場合、その人だから任せるというお客様も大切ですが、企業全体を考えると一人の従業員に社運が委ねられているような状況です。
コミュニケーションがうまくいっているのはなぜなのか、社内でデータを共有していくことが企業の成長につながります。
トラブルやセキュリティ対応
重大な問題が発生した際に決まった人でなければ対応できないということでは、さらに問題が大きくなってしまいます。
あらゆる場面を想定したマニュアルなどを作成して全社で緊急時に備える体制が必要です。
属人化の解消方法
属人化を解消するための方法を順序立てて見ていきます。
1.業務フローの見直し
企業内の業務を洗い出し、可視化や整理を進めます。
これにより、各従業員への偏りが生じている部分を確認し、解消できるものは何か把握します。
2.優先して改善するプロセスの選定
全ての業務やプロセスを同時に見直すことは、時間とコストの面から現実的ではありません。
したがって、優先順位をつけて改善すべきプロセスを選び出すことが非常に重要です。
特に属人化が著しい業務や、業務の効率や品質に大きな影響を与えているプロセスを最初に見直すことで、効果的に属人化の問題に取り組むことができるでしょう。
3.業務内容の標準化・マニュアル化
標準化できる業務はマニュアルを作成するなどして誰もが同じようにできるよう整えていきます。
注意したいのはマニュアルの形式です。たとえ膨大なマニュアルが存在しても従業員が活用できなければ意味がありません。
すぐに確認しやすい状態を維持できるようにしましょう。
4.情報共有ツールの活用
属人化を解消するためには、マニュアルを作成し、社内で情報を共有する仕組みを整備することが重要です。
マニュアルを含む社内情報を広く共有するために、アナログ管理ではなく業務管理ツールなどを利用することで、情報や業務の進捗をリアルタイムで共有できます。
これにより、特定の個人が情報の制御役となることを防ぎ、組織全体で情報を円滑に共有できるようになります。
5.PDCAを回す
一度仕組みを作ったら、あとは属人化がされていないかどうか定期的に確認し、解消するという流れを回していきましょう。
属人化解消の事例
実際に属人化を解消した企業の事例をご紹介します。
株式会社三功工業所
東京都の空調機器メーカーでは、従業員の高齢化による属人化が課題となっていました。
新規人材への適切な引継ぎを行うため、見積りや受注から工場指示、配送まで一貫したIT化を実施した結果、従業員の年齢バランスも改善し、属人化も解消されました。
出典:中小企業・小規模事業者の 人手不足対応事例集(PDF)|経済産業省
愛工業株式会社
静岡県のプラスチック製品メーカーでは、従来部品の輸送に最適なトラック台数の予測を担当者が行っていましたが、この属人化が課題となっていました。
データ分析とAI実験を並行することで、独自のトラック台数算出アプリを完成させ、工数の削減と属人化の解消を実現しています。
出典:中小企業と 外部AI人材の協働事例集 2021年度AI Quest(PDF)|経済産業省
属人化解消に役立つITツール
属人化解消に向けてITツールを活用するのもおすすめの方法です。以下にその例を挙げてみます。
プロジェクト管理ツール
プロジェクト管理ツールは、プロジェクトの進捗やタスクの管理を効率的に行うためのツールで、チームメンバー間での情報共有やタスクの進捗状況をリアルタイムで確認することができます。
タスクの優先順位や期限を明確にできるので、業務の進行をスムーズにすることができます。
コミュニケーションツール
コミュニケーションツールは、組織内のコミュニケーションをスムーズにするための便利なツールです。
チャット機能やビデオ会議機能を備えたツールを利用することで、リモートワークや異なる拠点間でも円滑なコミュニケーションが可能になります。
これにより、情報の非共有やミスコミュニケーションを減少させることが期待されます。
ERPシステム
属人化をできるだけ避けたいバックオフィス業務ですが、データを一か所にまとめて管理できるツールにERP(基幹業務システム)があります。
ERPシステムの中には簡単な操作で使えるものもあり、あらゆるデータも可視化して共有できるため、属人化の解消には最適です。
情報の一元化と共有
組織内の多岐にわたる情報を一つのデータベースに集約します。
これにより、特定の個人が持っている情報に依存することなく必要な情報にアクセスし共有することができます。
業務プロセスの標準化
ERPシステムは、業務プロセスを標準化する側面を持ち合わせています。
これにより、業務の手順やルールが明確になり特定の個人のノウハウや経験に依存することなく、業務を進めることができます。
これらの理由から、ERPシステムを導入することで属人化の問題を多く解消し、組織全体の業務効率や情報共有の質を向上させることができます。
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この記事を書いた人
下川 貴一朗
証券会社、外資・内資系コンサルティングファーム、プライベート・エクイティ・ファンドを経て、2020年10月より取締役CFOとして参画。 マーケティング・営業活動強化のため新たにマーケティング部門を設立し、自ら責任者として精力的に活動している。