中小企業にこそクラウドサービスがおすすめ!導入率や課題や補助金など解説
中小企業にとってクラウド化がIT導入の最適解ということはそれほど知られていないことや、現状の業務フローから大きな変化を嫌う傾向もあり積極的に取り組みをされていません。
ただ、中小企業こそクラウドサービスを活用すれば業務工数を大きく削減でき、業務効率化を実感できる場合が多いのです。
そこで今回は、中小企業のITツールが進まない理由やそれを解決するクラウド化について解説します。
目次
クラウドサービスとは?
クラウドサービスとは、インターネットを通して提供されるサービスを表します。
IaaS、PaaS、SaaSといった分類も行われるように、幅広い範囲のサービスが含まれます。
簡単に言うとIaaSはサーバやストレージなどのインフラサービス、PaaSはアプリケーションやソフトの開発環境サービス、SaaSはアプリやソフトのサービスをクラウドで提供します。
詳しくはこちらの記事もご覧ください。
IaaSとは?SaaS・PaaSとの違いや代表例をわかりやすく解説
PaaS(パース)とは?SaaSとの比較や代表例をわかりやすく紹介
SaaSとは?いまさら聞けない代表例やPaaS・IaaSとの違いを分かりやすく解説
身近にあるクラウドサービスとは
「クラウド」と聞くと何やら耳慣れない言葉で難しそうと感じる方も多いですが、実は中小企業でもすでに身近なところで様々なサービスが活用されています。
- OneDrive
- Dropbox
- クラウド会計ソフト
- クラウドERP
GoogleではGmailのサービスが有名です。メールの受信箱が自分のパソコンやスマホに存在するわけではなく、Googleに預けていると考えるとわかりやすいかもしれません。これらのメールをネットを通して見る形になります。
他にも、GoogleドライブやOneDrive、Dropboxなどは、従来パソコン側にあったストレージをクラウド化したシステムです。
また、クラウド型の会計ソフトやERPは、オンプレミス型として自社サーバやコンピュータにインストールする必要が無く、インターネット回線を通じてブラウザから操作することができるようになっています。
ERPというのは、生産管理や販売管理などの業務を一か所にまとめて行うことができるシステムですが、近年クラウド型が増えています。
中小企業のクラウドサービス導入率
令和3年8月末に行われた総務省の「通信利用動向調査」の結果、クラウドコンピューティングサービスを導入している企業の割合は、全体でみると70.4%となりました。
ただしこれを資本金別に見ると中小企業や小規模事業者などの規模が小さい企業は導入率が低く、1000万円未満では48.1%と半数にも達していません。
中小企業の定義は業種にによって異なるためはっきりとした数値は出せませんが、資本金1億円未満の企業をまとめると約61%というのが一つの目安となるでしょう。
令和3年通信利用動向調査の結果:要点まとめ
スマートフォンの保有状況
世帯の保有割合が88.6%、個人の保有割合が74.3%となっており増加傾向にあります。
一方、スマートフォンではない携帯電話の保有は減少しています。
インターネット利用機器
個人の利用機器として、スマートフォンがパソコンを上回っており20~49歳の年齢層で約9割が利用しています。
また、SNSの利用者の割合は78.7%に達しています。
テレワークの導入
企業の51.9%がテレワークを導入しており、その主な目的として「新型コロナウイルス感染症への対応」が9割を超えています。
クラウドサービスの導入
企業の70.4%がクラウドコンピューティングサービスを導入しており、その導入による効果を「非常に効果があった」または「ある程度効果があった」と感じる企業は、導入企業全体の88.2%に上っています。
中小企業の現状とデジタル化の必要性
中小企業は、大企業と比べて資本やリソースが限られているため効率的な経営が必要です。
この背景から、デジタル化は中小企業にとっての成長へのカギとなるでしょう。
デジタル技術の進歩によって、業務の自動化やデータ分析などこれまでにない新しいビジネスの可能性が広がっています。
デジタル化により、中小企業も大企業と同じく競争力を高め成長のチャンスを手にすることができるのです。
中小企業のクラウド化の課題
導入率から見ると規模が小さくなるにしたがってクラウド化が進まないという現状があるため、中小企業がクラウドサービスを導入するには多くの課題があると考えられます。
この中小企業でクラウド化が進みにくい理由については、2021年2月に行われた東京商工会議所の中小企業のデジタルシフト推進委員会による「IT活用実態調査」の結果が参考になります。
この調査の中でIT活用における中小企業の課題としては、「IT導入の旗振り役が務まるような人材がいない」という回答が最多でした。また、「コストが負担できない」という回答も多くありました。
しかし実はこのような課題を感じている中小企業こそ、クラウドサービスを導入することで、どちらの課題も解決できると考えられます。
人材に関してはクラウドサービスの運用自体は提供者側が行ってくれるという特徴で解決できますし、コストが負担できないという課題も比較的初期費用が少ないことから導入しやすいことで解決できると言えるでしょう。
中小企業がクラウド化に活用できる補助金や助成金
また、国がDXを推進していることもあり、中小企業がクラウド化に使用できる補助金や助成金も増えています。
これらを活用することで、これまで難しいと感じていたクラウド化を中小企業でも簡単にできる可能性が高まっています。
クラウドサービス利用料などに使える中小企業のための補助金や助成金をいくつかご紹介します。
IT導入補助金
IT導入補助金は、中小企業や小規模事業者がITツールを導入する際の費用の一部を補助する制度です。
この補助金は、令和元年度補正予算および令和3年度補正予算「IT導入補助金2023(サービス等生産性向上IT導入支援事業)」として実施されています。
具体的には、ITツールの導入による生産性の向上やデジタルトランスフォーメーション(DX)を推進することを目的としています。
参考:IT導入補助金
人材確保等支援助成金(テレワークコース)
人材確保等支援助成金(テレワークコース)は、中小企業がテレワークを導入・実施する際の支援を目的とした助成金です。
この助成金は、良質なテレワークの制度を導入・実施することで、労働者の人材確保や雇用管理の改善を図る中小企業事業主を対象としています。
- リモートアクセス及びリモートデスクトップサービス
- 仮想デスクトップサービス
- クラウドPBXサービス
- Web会議等に用いるコミュニケーションサービス
- ウイルス対策及びエンドポイントセキュリティサービス
機器等の導入助成においては、支給対象となる経費の30%(最大100万円、テレワーク実施対象労働者1人あたり20万円を上限とする)となります。
目標達成助成においては、支給対象となる経費の20%(賃金要件を満たす場合は35%)が支給されます。
備考:令和5年4月1日の改正により、テレワーク用の端末(PC、タブレット、スマートフォン)のレンタルやリース費用も助成対象となりました。
事業再構築補助金
事業再構築補助金は、新型コロナウイルス感染症の影響が長期化する中、中小企業等の事業再構築を支援するための補助金です。
この補助金は、ポストコロナ・ウィズコロナ時代の経済社会の変化に対応するため、新分野展開、事業転換、業種転換、業態転換、または事業再編といった大胆な事業再構築に挑戦する中小企業等を支援することを目的としています。
”クラウドサービス利用費”も補助対象経費の区分の一つとなっています。
参照:事業再構築補助金
中小企業がクラウド化するメリット
冒頭の総務省の「通信利用動向調査」でも、クラウドサービスを取り入れた企業の88.2%が「非常に効果があった」、「ある程度効果があった」と回答しています。
クラウドサービスを活用することで中小企業にも大きなメリットがあります。中小企業のクラウド化にはどのようなメリットがあるのか見ていきます。
社内でデータを共有できる
クラウド化されていないデータを使用している中小企業の場合、各人がそれぞれに作成したものを印刷やメールで共有するというのが一般的です。
クラウド化されていると一つのデータを皆で作成することができ、インターフェースも同じ状態で確認することができます。
特にリアルタイムの情報が重要な割合を占めるビジネスシーンでは、タイムラグが生じないというのも大きなメリットです。
リモート化を進めやすい
昨今の働き方改革の流れやコロナ禍という状況もあり、リモートワークが急増しています。
クラウド化されていると、ネット環境が整ってさえいればどこからでもアクセスしてデータを確認できるため、リモートワークに移行しやすいです。
人材を確保したいけれど広いスペースを用意するコストが無いという中小企業でも問題ありません。
コストを削減できる
中小企業がITを導入するにあたってコストが高いことが障壁になるケースも多いですが、クラウドサービスは従来のオンプレミス型サービスと比較して初期費用が少ないという特徴があります。
サービスの利用料も月額で支払うタイプが多く、導入したいけれどコストが心配という中小企業でも安心です。
また、オンプレミス型のサービスは自社でアップデートやバックアップなどの管理を行う必要がありますが、クラウドサービスならその心配がありません。
結果として専任者などの人材を確保する必要がなくなるため、人件費の大きな削減につながります。
IT専門家などの人材を確保できないという中小企業のお悩みも解決できます。
セキュリティ面での安心感
クラウド事業者(サービスプロバイダー)は、データの保護とセキュリティに対して大きな投資を行っています。
こうした取り組みにより、中小企業も大手企業と同等のセキュリティ対策を享受できます。
これまで中小企業が自前でセキュリティを整えることはコストや専門知識のハードルが高かったのですが、クラウドサービスを利用することで高水準のセキュリティ対策を手軽に利用できるようになります。
また、サービスプロバイダーはセキュリティのリスクや新たな脅威に対処するために常に最新の対策を実施し、ユーザーのデータを24時間・365日守り続けています。
こうした努力により、中小企業は自社の事業に注力する一方で、データの安全性やプライバシー保護に関するリスクを大幅に軽減することができます。
中小企業におすすめのクラウドサービス
クラウド型ファイルサーバー『Box over VPN』
クラウド型ファイルサーバーとは、従来の物理的なファイルサーバーをクラウド上に構築するサービスのことを指します。
これにより、データの保存、管理、共有がインターネットを介してどこからでも行えるようになります。
特に、物理的な設備の導入や維持管理の手間が不要となり、コスト削減や柔軟なスケーリングが可能となります。
また、VPN(Virtual Private Network)とは、公開されたインターネット上で仮想的な専用線を構築する技術です。
これにより、遠隔地のオフィスやモバイル環境からも、企業内ネットワークに安全にアクセスすることができます。
VPNを使用することで、データの盗聴や改ざんを防ぐことができ、セキュアな通信が実現されます。
例えば、NTTコミュニケーションズが提供するクラウド型ファイルサーバー『Box over VPN』は、VPN技術を活用して高度なセキュリティを実現したサービスです。
無制限のストレージ容量で、社内外とのファイル共有をセキュアに行うことができます。
データは日本国内のデータセンターに保存され、法的なリスクを低減します。AES256bitの暗号化やアクセス権限の設定など、データのセキュリティ面も安心です。
クラウド型ファイルサーバーの利便性とVPNのセキュリティを組み合わせた、中小企業にとって非常に価値の高い、利便性のあるサービスとなっています。
クラウド型CRM(顧客管理システム)『Salesforce Sales Cloud』
『Salesforce(セールスフォース)』は、1999年にアメリカで創立され、翌年には日本法人も誕生しました。
名前の通り、最初は顧客管理(CRM)や営業支援に特化したシステムソリューションを提供していましたが、今ではマーケティング、カスタマーサービス、eコマース、アナリティクスなど、ビジネスの多岐にわたる領域にわたるクラウドサービスを提供する企業です。
その中でもクラウド型CRMである『Salesforce Sales Cloud』は、Salesforce社が提供するCRM(顧客管理システム)・SFA(営業支援システム)のプラットフォームです。顧客との関係を最適化し、企業と顧客の結びつきを深める戦略や取り組みをトータルでサポートします。
CRMとSFAの機能が一体となり、顧客情報の管理や営業活動の自動化を統合的に管理。
これによって営業の効率性を向上させることが可能なソリューションです。収集された情報を活かして、お客様のニーズを把握し、購買意欲を高める提案を行うことができます。リアルタイムのデータを活用して、販売の機会を見逃すことなく商談を効果的に進めることができます。
無料なのにクラウドストレージの容量サイズが魅力『Googleドライブ』
クラウドストレージとは、データをインターネットを介してクラウド上で保管・管理するサービスで、今までは個人が所有するパソコンやサーバーにデータを保存していましたが、クラウドストレージを利用することで、データを特定の物理的な場所に拘束されずに保存・アクセスすることが可能になります。
この柔軟性から、今日の多様な場所での業務やリモートワークが一般的な現代において、データのアクセスや共有を容易にするツールとして、多くの個人や企業に広く利用されています。
その中でも代表的な「Googleドライブ」は無料で利用できる容量は15GBと大容量です。ユーザーはデータの保存や共有をコストを気にせずに行えます。
また、Googleドライブはマルウェアやスパム、ランサムウェアなどからの保護機能が組み込まれており、ファイルへのアクセスは暗号化されて安全に守られます。
さらに「Googleドキュメント」や「Googleスプレッドシート」などのツールと連携がスムーズです。中小企業が業務効率を向上させるための有用なツールとして、クラウドストレージの中でも特におすすめのクラウドサービスです。
クラウドサービスを利用する際の注意点
クラウドサービスの利用は企業の成長や変革を後押しする強力なツールとなり得ますが、その選択や導入の方法には十分な注意が必要です。
下記のポイントを踏まえながら、自社のニーズや状況に合ったサービスを選び、効果的に活用していくことが求められます。
サポートが充実しているサービスを選ぶ
クラウドサービスは、初めて利用する際や運用中に疑問やトラブルが生じることがあります。
そのような場面で、スムーズなサポートが受けられるかどうかは、サービスの満足度や業務の円滑さに影響します。
特に中小企業では限られたIT部門の状況もあるため、外部のサポートが重要な要素となることもあります。
そこで、適切なサポート体制が整っているクラウドサービスを選ぶことで、安心して長期間にわたってサービスを利用することができるでしょう。
最初はスモールスタートを意識する
クラウドサービスの導入は、業務の大きな変革を伴うことが多いので、急激な大規模な導入は従業員の混乱や業務のストップを引き起こす可能性があります。
そのため、最初は必要最低限な機能から取り入れたり、特定の部署やチームから段階的に導入するアプローチを検討することが大切です。
これにより、従業員が新しいシステムに適応する時間を確保しつつ、導入の成果や課題を明確にし、次のステップに進めましょう。
中小企業こそクラウド化で業績アップ!クラウドERP「キャムマックス」をご紹介
これからクラウドをつかってDX化を進めたいという中小企業は、まずGoogleなどの無料サービスを利用してみるのがおすすめです。
すでにクラウドサービスには慣れているという中小企業であれば、業務管理システムの導入がおすすめです。
キャムマックスはクラウド型のERPシステムですので、費用を安く抑えることができ、社内の様々な情報を一元管理することができます。
この記事を書いた人
下川 貴一朗
証券会社、外資・内資系コンサルティングファーム、プライベート・エクイティ・ファンドを経て、2020年10月より取締役CFOとして参画。 マーケティング・営業活動強化のため新たにマーケティング部門を設立し、自ら責任者として精力的に活動している。