中小企業向け会計ソフトとは?国が策定した税制や補助金を活かして導入する方法をご紹介
会計ソフトを使用している中小企業の割合は年々増えていますが、費用がかかるといった理由で導入できずにいるケースもあります。こうした中小企業の会計ソフト導入を支援する目的で国が策定した税制や補助金事業がありますので、うまく活用して導入することをおすすめします。
今回の記事では、中小企業向けの会計ソフトの選び方についてご紹介します。
目次
中小企業に会計ソフトが必要な理由
中小企業庁が発表した「小規模事業者のIT 利活用による労働生産性の向上」にその答えがあります。
2017年の三菱UFJリサーチ&コンサルティング(株)「小規模事業者などの事業活動に関する調査」により、当時の中小企業の財務・会計業務におけるITの導入率が公表されています。
<参照元:https://www.chusho.meti.go.jp/pamflet/hakusyo/H30/PDF/shokibo/04sHakusyo_part2_chap2_web.pdf>
こちらの調査結果によると、39.3%の事業者が会計ソフトを導入(クラウド型、インストール型、パッケージソフトの合算)、18.9%の事業者は紙で計算しており未導入となっています。
さらに直近3年間の経常利益額の傾向に注目してください。
「会計ソフトを利用している」事業者の方が「特に何も使用しない(紙で計算など)」の事業者と比較して経常利益額が増加傾向にあり、中でもクラウド型の利用者が最も高いという結果が出ています。
このように中小企業が会計ソフトを使用するかどうかが利益の増加率に影響を与えるという結果が実証されています。
中小企業の会計ソフト導入支援
このようなデータをもとに中小企業庁や政府でも中小企業が積極的に会計ソフトを導入して業務改善が行えるよう税制や補助金を提案しています。
会計ソフトを導入したいが費用負担が気になるという場合にぜひ活用したいおすすめの制度をご紹介します。
中小企業投資促進税制
中小企業投資促進税制とは、中小企業者などが機械などを取得した場合の特別償却または税額控除です。
対象となるのは、青色申告書を提出する中小企業者(資本金額1億円以下の法人、農業協同組合、商店街振興組合など)または従業員1,000人以下の個人事業主です。
資本金3,000万円超の中小企業は、特別償却(取得価格の30%)、資本金3,000万円以下の中小企業は特別償却(取得価格の30%)または税額控除(取得価格の7%)という措置となります。
ただし、この税制は令和5年3月31日までの間に事業用に供した資産に適用が限られます。
<参考:中小企業投資促進税制|中小企業庁>
IT導入補助金
IT導入補助金は、会計ソフトなどのITツールを導入する中小企業をサポートする目的で中小企業庁が行う補助金制度です。
令和4年度に関しては、インボイス制度導入への対応が進むと見込まれることから、補助対象を会計ソフト、受発注ソフト、決済ソフト、ECソフトに特化し、補助率の引き上げが行われました。
また近年のクラウド化の流れを受け、クラウド利用料を2年分まとめての補助とPC・タブレット、レジ・券売機などの購入も補助対象に追加されました。
IT導入補助金の申請は令和4年度分はすでに締め切られてしまっていますが、2017年の補助金事業開始以来毎年募集が行われています。
<参考:IT導入補助金2022>
中小企業向け会計ソフトを選ぶ時の注目ポイント
中小企業向けの会計ソフトを導入する際のポイントは以下の4つになります。
価格
中小企業が会計ソフトの導入を迷う原因の一つに導入費用が挙げられます。
できるだけ費用がかからない会計ソフトを探されるかと思いますが、本来の目的である業務の効率化を目指すにはある程度の予算が必要です。
Excelで十分という企業もありますが、入力するための人手が必要になります。
会計ソフトを選ぶ際には価格だけではなく、この後ご紹介する会計ソフトの機能やサポートならびに種類を総合的に判断するのがおすすめです。
機能
機能は帳簿をつけるだけのものから経営分析を行えるものまで会計ソフトによって様々です。
冒頭でご紹介した中小企業庁のレポートでも、より多くの業務をIT化している企業の方が利益が上がる割合が高いという結果が示されています。
他にもセキュリティ対策はされているのか、自社で行う必要があるのかという部分も確認したいところです。
サポート体制
いくら高機能な会計ソフトでも、社員が使いこなせなければ意味がありません。
できるだけ操作が簡単なものが良いですが、わからないときに問い合わせることができるよう、導入から運用までサポート体制がしっかりしている会計ソフトがおすすめです。
また、会計ソフトの場合は特に税制度や法改正による影響を受けやすいためバージョンアップが行われるかどうかも重要です。
会計ソフトの種類
会計ソフトは以下の3種類に分けられます。
パッケージ型
パッケージ型会計ソフトというのは、パソコンにインストールして使用するタイプのものです。
メリットは、自社でしっかりセキュリティ対策が行えるのであればデータ漏洩の心配が少ないという利点がありますが、
買い切りとなるため、サポートや保守サービスは別途年間契約で費用が発生することが多くなります。
クラウド型
クラウド型は近年増えつつあるタイプです。
パッケージのように手元に会計ソフトを置くのではなく、提供者側のシステムをインターネット経由で直接使用する仕組みです。
パソコンに限らずスマホやタブレットからも操作可能なソフトも多く、決められたパソコンからしかアクセスできないということもありません。
アップデートやセキュリティ対策は月額費用に含まれることが多く、自社側の負担が少なくなるのもメリットです。
一方でインターネットの環境整備が重要となります。ネットが途切れたり速度が遅いという場合には、作業効率が下がってしまう恐れもあります。
ERP
ERPというのはパッケージ型かクラウド型かという分類とはまた異なり、会計に限らず様々な業務をまとめて管理することを意味しています。
「Enterprise Resource Planning」の略語で、経営資源を有効活用して効率化を図るという概念です。
管理が必要な業務ごとにソフトを導入していくのが従来のやり方だとすれば、ERPでは全ての業務を一つのソフトでまとめて管理していくという方法をとります。
したがって、会計ソフト単独で考えるのではなくその他の在庫管理、販売管理、購買管理などのデータをまとめて活用します。
中小企業が会計ソフトを導入するメリット
中小企業が会計ソフトを導入することで、業務の効率化や財務データの正確な収集・分析、経営の意思決定や資金繰りの改善といった利点を享受することができます。
これにより、経営の効率化や収益性の向上など企業の成長や競争力強化に寄与することが期待されます。
以下に、具体的な効果の例をご紹介します。
会計業務の効率化
会計ソフトを導入することで、手作業や複雑な計算を自動化することができます。
入力や仕訳の自動化、データの集計や帳票作成の容易さにより経理作業の時間と労力を大幅に削減できます。
また、自動化によるエラーの軽減や迅速な情報共有によって、業務プロセスの円滑化が実現されます。
正確な財務データの収集と分析
会計ソフトの導入により、データの正確性と一貫性が確保されます。入力ミスや漏れのリスクが低減され、信頼性の高い財務データを効率的に収集できます。また、自動集計やデータの連動性により、リアルタイムで財務状況を把握することが容易になります。
これによって、正確な分析や経営判断が可能となり、経営者は的確な戦略を立案することができます。
経営の意思決定と資金繰りの改善
会計ソフトは経営者にとって重要な意思決定をするツールとしても利用できます。
財務データや経済指標の分析により、企業の健全性や収益性や資金状況などを把握することができます。
これにより、経営の現状把握や将来予測を行い戦略的な意思決定を行うことができます。
また、資金繰りの改善にも役立ちます。
資金の収支やキャッシュフローの予測を行い、必要な資金調達や適切な資金運用を計画することが可能です。
中小企業向け会計ソフトの選び方と重要なポイント
クラウド型とインストール型の違いと特徴
クラウド型会計ソフト
・インターネットを介してクラウド上で利用できる形式です。
・ソフトウェアのインストールやアップデートは不要で、常に最新のバージョンが利用可能です。
・データはクラウド上に保存され、複数のデバイスからアクセスできます。
・利用料金は通常、月額または年額で支払われます。
・オンライン上でのデータバックアップやセキュリティ対策が提供されます。
インストール型会計ソフト
・ソフトウェアを個々のコンピュータにインストールして使用する形式です。
・ソフトウェアのアップデートは手動で行う必要があります。
・データはコンピュータ内に保存され、通常はそのコンピュータからのみアクセス可能です。
・一度の購入で長期間利用できるため、経済的なメリットがあります。
・コンピュータのデータバックアップやセキュリティ対策は、利用者自身が行う必要があります。
経理担当者のレベルや経験に合わせた機能選定
初めて会計ソフトを導入する場合には、以下のようなものであればシステムに抵抗がある方でも安心してご利用いただけます。
使いやすさと操作性
直感的に操作できる使いやすいユーザーインターフェースであれば、基本的な操作でつまづくことはありません。
自動処理のサポート
仕訳や帳票などを自動的に生成する機能があり、手作業のミスを減らし、業務処理を効率化します。
テンプレートやガイドの提供
あらかじめ設定されたテンプレートやガイドが用意されており、経理処理の手順や作業フローをサポートします。
レポートや分析機能
財務データの集計や分析が簡単に行える機能があり、経営者に財務状況の把握や意思決定のサポートができます。
一方、ある程度経験やスキルを持つ経理担当者には、以下のような機能を備えた会計ソフトがおすすめです。
多機能な帳票作成
様々な帳票や財務報告書を柔軟に作成できる機能があり、必要な情報をカスタマイズできます。
複数法人の管理
複数の法人や事業を効率的に管理できる機能があります。経理担当者は複数の組織やプロジェクトを管理することができます。
複数通貨に対応
外貨取引や海外展開を行う企業には、複数通貨に対応した機能が必要です。
予算管理機能
予算の策定や実績との比較、進捗管理など、経理担当者が予算を管理する機能が重要です。
これらの要素を備えたソフトウェアは、経理担当者のスキルや経験に合わせて選択する際に役立ちます。
また、会社の規模や事業内容にも合った機能選定が重要です。
コスト面の考慮事項
コストに関する考慮事項は以下の通りです。
クラウド型とインストール型では内容が大きく異なるため、慎重に検討する必要があります。
導入費用
会計ソフトの導入には初期費用が発生する場合があります。
ライセンス料やハードウェアの購入、カスタマイズやデータ移行に関わる費用を考慮しましょう。
利用料金
会計ソフトには利用料金がかかることがあります。
月額固定料金やユーザー数に応じた料金体系を確認し、予算内で持続的に利用できるかを考慮しましょう。
アップグレード費用
会計ソフトのアップグレードやバージョンアップには費用がかかることがあります。
将来的なシステムの拡張や機能追加に備えて、コスト面を考慮しましょう。
ハードウェアやシステム要件
会計ソフトの導入には適切なハードウェアやシステム要件(OSや処理性能)が必要です。
これにはサーバーの構築や保守、セキュリティ対策などが含まれます。それに伴うコストやリソースの確保も考慮しましょう。
これらの要素を柔軟に考慮し、会計ソフトの選択を行いましょう。
サポート体制の重要性と選び方
会計ソフトを選ぶ際には、ベンダーのサポート体制も重要な要素です。
もし何か障害や問題が発生した場合、サポート体制や対応時間、問い合わせ方法などサポート体制があるかを確認しておきましょう。
また、会計ソフトは法改正や業務ニーズの変化に迅速に対応する必要があります。
導入後も定期的なアップデートや新機能の提供を行っているかを確認し、将来的なシステムの拡張やニーズの変化に対応できるかを考慮しましょう。
さらに、インターネット上のユーザー口コミや評判も参考にすることで、サポートの質や信頼性などの情報を得ることができます。
おすすめの中小企業向けクラウド会計ソフト
業界のシェア率
MM総研によると、法人企業の会計ソフト利用率(2017年時点)は54.1%で、クラウド型は14.5%と年々増加しています。
行政の手続きもデジタル化・オンライン化が進んでおり、クラウドサービスがますます注目を集めています。
そこで、クラウド会計ソフトで高いシェア率を誇る「freee」「マネーフォワード」「弥生ソフト」を中心に、中小企業向けのクラウド会計ソフトをご紹介します。
マネーフォワードクラウド会計
マネーフォワードクラウド会計は、銀行口座やクレジットカード、電子マネー、POSレジ、通販サイトなど2,400以上の金融関連サービスとの連携が可能です。
日々の取引入力や給与計算などを自動化し、仕訳入力の手間を大幅に削減することができます。
また、画面上でどのような入力が必要かが分かりやすく表示されており、初めて会計ソフトを利用する方でも操作しやすい設計となっています。
さらに、他社のソフトからのデータのインポートにも対応しているため、移行作業もスムーズに行えます。
月額:2,980〜5,980円(税抜)別途・中堅〜上場企業向けプランあり
freee会計
freee会計は、業界シェアNo.1を誇るクラウド型の会計ソフトです。
フリーランスから大企業まで、さまざまな企業の経理状況に対応することが可能です。
データの取り込みや仕訳の自動化によって、経理業務の負担を軽減することができます。
また、会計の専門知識がない方でも利用しやすくなるよう、わかりやすいユーザーインターフェースやAIによる自動仕訳などのサポート機能が充実しています。
これにより、業務にかかる時間を大幅に削減し、業務効率を向上させることができます。
また、経理以外のスタッフでもリアルタイムで多くのレポートを確認できるため、スピーディな経営判断が求められる場合にも役立ちます。
月額:1,980〜47,760円(税抜)
勘定奉行クラウド
勘定奉行クラウドは、中堅・中小企業向けに提供されているクラウドベースの会計ソフトウェアです。
従来の勘定奉行ソフトウェアの使いやすさを継承しつつ、さらに高機能に進化しています。
金融機関からの入出金データやExcelなどのデータと連携し、クラウドならではの学習機能によって起票を自動化することができます。
また、セキュリティ面での信頼性や改正電帳法への対応など、法令対応に関わる業務課題の解決にも役立つ機能を備えています。
経理担当者だけでなく、税理士や会計士といった財務会計の専門家にも選ばれている会計ソフトです。
初期費用:50,000円(税抜)/ 月額:7,750円〜28,000円(税抜)別途・上位プランあり
HANJO法人会計
HANJO法人会計は、飲食店の経理に特化したクラウドベースの会計ソフトウェアです。
ネットバンキングデータを活用して自動的に仕訳を作成したり、AIによる領収書解析機能を利用してスマートフォンでレシートや領収書を撮影するだけで、AIが文字を認識し、適切な勘定科目に自動入力してくれます。
これにより、経理業務の負担を大幅に軽減し、店舗業務に集中できる環境を実現します。また、簡単な操作と見やすいグラフ表示により、飲食店の経理業務をサポートします。
さらに、自動で経営診断まで行える機能も特徴的です。
月額:2,178円(税込)
フリーウェイ経理Lite
フリーウェイ経理Liteは、企業の会計業務をサポートするソフトウェアで、完全無料プランも提供されているクラウドサービスです。
また、リーズナブルな価格で利用できる有料版もあります。
標準機能として、データ入力やマスタ管理、帳票印刷、グラフ作成、決算書出力など、会計業務に必要な機能が備わっていますので、費用を抑えたい企業にとって選ばれるサービスです。
さらに、他のフリーウェイシリーズとの連携も可能であり、拡張性も兼ね備えています。
月額:3,000円(税抜)/ 無料プランあり
弥生会計 オンライン
弥生会計 オンラインは、日々の取引入力を自動化し、経営状況を見える化するための会計ソフトウェアです。
小規模法人に必要な会計業務を一つのソフトウェアで簡単に行うことができ、会計初心者でも手軽に始めることができます。
また、起業したばかりの法人には最大2年間の無料期間が設けられており、導入のハードルも低くなっています。
全国の10,000以上の会計事務所からも推奨されている弥生会計シリーズを手軽に利用することができます。
月額:2,166円〜2,933円(税抜)最大2年間の無料プランあり
PCAクラウド 会計
PCAクラウド会計は、日常の伝票入力だけで元帳・試算表・決算書の作成や、自動仕訳の登録、承認レベルの設定、経営分析、各種管理帳票の出力などが簡単に行える会計ソフトウェアです。
これにより、会計業務の手間を大幅に軽減することができます。
さらに、銀行口座やクレジットカード、他のクラウドサービスとのシームレスな連携により、業務の効率化や生産性の向上が期待できます。
また、中小企業向けのクラウド会計ソフトとして様々な業界の会社から利用されており、製造業やサービス業や小売業など幅広い業界で20,000法人以上の導入実績があります。
月額:13,860円(税込)〜
財務会計以外にも販売管理や在庫管理も一元管理できるクラウドERPシステム『キャムマックス』
ERPとは?
ERPというのはパッケージ型かクラウド型かという分類とはまた異なり、会計に限らず様々な業務をまとめて管理することを意味しています。「Enterprise Resource Planning」の略語で、経営資源を有効活用して効率化を図るという概念です。管理が必要な業務ごとにソフトを導入していくのが従来のやり方だとすれば、ERPでは全ての業務を一つのソフトでまとめて管理していくという方法をとります。
したがって、会計ソフト単独で考えるのではなくその他の在庫管理、販売管理、購買管理などのデータをまとめて活用します。
会計ソフトが導入されているかどうかで売上が決まるといっても良いほど重要な存在ですが、会計ソフトさえあればよいかというとそうではないというのが実情です。
より多くの業務をできるだけIT化して効率を高めることが、今後の中小企業の発展のカギとなることは間違いありません。
キャムマックスは会計をはじめとする中小企業のあらゆる業務を一括管理できるERPソフトです。
この記事を書いた人
下川 貴一朗
証券会社、外資・内資系コンサルティングファーム、プライベート・エクイティ・ファンドを経て、2020年10月より取締役CFOとして参画。 マーケティング・営業活動強化のため新たにマーケティング部門を設立し、自ら責任者として精力的に活動している。