購買管理に重要なこととは?5原則や業務フローとシステム
企業の運用体制・経営体制を健全なものにするために欠かすことのできない「購買管理」。
必要な資材を適切なタイミングと量で仕入れることにより、無理の無い生産サイクルが実現できます。
この記事では、購買管理を実現するために重要な5原則や、購買プロセスを効率化する「購買管理システム」についてご紹介します。
目次
購買管理とは?
元々「購買管理」という言葉は、工業規格で知られるJISの生産管理用語として記された用語です。
JISでは、「生産活動に当たって、外部から適正な品質の資材を必要量だけ、必要な時期までに経済的に調達するための手段の体系。」と定義されています。
備考として「その機能として、内外製区分、購買計画、仕入先開拓と選定、取引契約、発注管理、価格管理、原価低減活動、納期管理、品質管理、検収支払管理、仕入先管理、リスク管理、購買業務規定の整備などが含まれる。」と記されています。
企業の購買管理部は、社外の仕入先と社内の販売をつなげる橋渡し的存在と考えれば、より具体的にイメージが持てると思います。
また、購買管理は調達管理と違うの?という方も多いのですが、漢字を見てわかるように「調達」は、購入に限らず、「調整して届ける」といった意味合いが強いです。
中小企業における購買管理の重要性
購買管理業務は企業を運営する上でとても重要です。
しかし、仕入先管理や在庫管理などに工数がかかってしまうため、どこの企業も業務効率化を図りたいと考えているはずです。
そこで、人的ミスを減らし購買管理の効率化を図るには、ERPシステムや購買管理システムなどデジタルツールを活用することが有効とされています。
それらを導入することで、業務の可視化や自動化が可能となり、結果としてコスト削減や生産性向上など、企業にとって多くのメリットとなっていきます。
ITツールによる購買業務の効率化
購買業務の効率化と精度向上のためには、クラウドサービスやERPシステムなどのITツールの導入が有効です。これにより、購買プロセスの自動化、購買データの一元管理、リアルタイムでの在庫・納期管理が可能になり、購買業務全体の効率化とコスト削減を実現できます。
購買管理システム
クラウドベースの購買管理システムを導入することで、購買関連の情報を一元的に管理し、どこからでもアクセス可能になります。
これにより、購買プロセスの透明性が高まり、購買部門以外の関連部署も最新の情報に基づいて判断を行えるようになります。
Web-EDI
インターネット回線を利用した「Web-EDI」を活用し、オンラインを通じてサプライヤーとの見積もり、発注、請求書処理などを自動化します。
これにより、紙ベースの文書管理から脱却し、購買プロセスを迅速化できるだけでなく、データの正確性も向上します。
ERPシステム
在庫管理システムと購買プロセスを統合できるERPシステムを活用することで、在庫レベルの自動監視が可能になり、必要な時に自動的に発注が行われるようになります。
これにより、過剰在庫や在庫切れのリスクを最小限に抑えることができます。
この他、ERPを活用すればサプライヤー管理や、分析ツールなどの活用も可能になり購買業務を大きくサポートします。
購買管理の5原則とは
生産管理に関係する資格を目指している場合に必ずと言っていいほど出てくるのが「購買管理の5原則」です。
製造業の現場で必須のQCD(品質、価格、納期)に、取引先と数量を加えたものとなります。
- 取引先の選定
- 品質の確保
- 数量の決定
- 納期の決定
- 価格の決定
以下、これらの5つの原則をもとに購買管理業務の具体的なフローについて説明します。
取引先の選定
取引先を選定するポイントは以下になります。
・品質管理能力
・コスト競争力
・納期遵守能力
・信頼性
・リスクマネジメント能力
これらを取引先の条件にして、会社にとって適切な取引先をピックアップしましょう。
品質の確保
品質が低い商品を仕入れた場合、不良品の廃棄や交換やクレーム対応などが発生し、企業にとって大きなコストや時間のロスとなります。
品質を確保するためには、以下のポイントに注意することが必要です。
・品質要件の明確化
・取引先の品質管理能力の確認
・検査の実施
・問題発生時の対応策の策定
品質を確保することができるよう、取引先とのコミュニケーションを重視することで品質管理体制を強化しましょう。
数量の決定
仕入れる商品の数量を適切に決定することが重要です。
過剰な在庫を抱えることで、保管コストの増加や商品の陳腐化や廃棄などが発生します。
逆に、在庫不足により納期の遅れや顧客からの注文不足などの問題が発生する可能性があります。
適切な数量を決定するためには、以下のポイントに注意することが重要です。
・需要予測の実施
・在庫管理の最適化
・調達プロセスの透明化
適切な数量の決定を行うことで、在庫コストを削減できたり納期遅れや注文不足などのリスクを最小限に抑えましょう。
納期の決定
納期が遅れると、顧客からの信頼失墜や競合他社への顧客流失や生産計画の乱れなどが発生する可能性があります。
納期を適切に決定するためには、以下のポイントに注意することが必要です。
・調達リードタイムの把握
・生産リードタイムの把握
・顧客の要求納期の把握
適切な納期の決定を行い、納期遅れなどのリスクを最小限に抑えましょう。
価格の決定
極端に仕入れ額が高いと企業の収益性を低下させ、逆に安すぎると品質の低下やリスクの増大などが発生する可能性があります。
そのため、適切な価格の決定を行うためには以下のポイントに注意することが必要です。
・市場価格の調査
・長期的な価格安定性の確保
・品質やリスクに応じた価格設定
適切な価格の決定を行い企業の収益性を維持しつつ、品質の確保やリスクの回避しましょう。
購買管理の業務フロー
購買管理の5原則を元に、上記の図のように業務フローが決定します。
それでは、実際に購買管理業務を担当することになった場合の流れについて見ていきます。
購買計画の作成
購買計画の作成とは、経営戦略や生産計画に基づいて必要な資材を調達するための計画を策定することです。
購入計画には、対象となる商品やサービスの「種類」「数量」「納期」「価格」「品質」「発注方法」などが含まれます。
また、過去の購買実績や市場動向や競合情報なども考慮して的確な購買計画を策定する必要があります。
取引先の選定、発注
適正な価格で適正な品質の商品やサービスを提供してくれる信頼できる取引先を選定することが重要です。
そのためには、複数の候補をあげ取引先の情報や与信調査を行い、その上でコンペなどをすることで安心して取引が可能な企業を選定することができます。
また、取引先との契約内容や発注条件などを明確にした上で、必要な資材や商品を発注しましょう。
検品、品質の確認
商品を仕入れた後は検品作業に移ります。
検品では商品の数量や品質に問題がないかを確認します。
検品作業の結果、商品に不良があれば返品交換などの処理を行います。
また、購買側で不良品があった場合は取引先に対して、品質改善の要求や再発防止策を提案しましょう。
保管
商品の品質が確認できたら次は保管に移ります。
商品を適切な場所に保管し、紛失や破損を防止するための管理を行います。
保管場所には商品の特性に合わせた適切な環境が必要であり、商品の種類によっては温度・湿度管理が必要な場合があります。
また、商品が出庫する際には正確な在庫管理を行い欠品や過剰在庫を防止するための対策を講じる必要があるでしょう。
購買管理の前に行うべき内部統制、購買統制におけるポイント
このように購買管理は、仕入の購買先を決定するという強い権限を持つ部門です。
そのため、不正や仕入れのミスが発生することも少なくありません。
購買管理の業務内容を見る前に、これらを防止する対策を確認していきます。
購買管理の内部統制とは?
購買管理部は資材調達先を選定するという立場になるため、多くの仕入先から見積を取って選ぶことになりますが、この過程の中で購買管理部の担当者が金銭的な報酬を受け取って便宜を図るといった不正が起こってしまう場合があります。
このような癒着を事前に防ぐため、企業内部のルールを決める内部統制が必要となります。
購買管理規程を作成
購買管理の内部統制を明確化するためには、購買管理規程を作成することをおすすめします。
購買担当者が自ら仕入先を選定し、検品、支払いまでこなすといったことが問題発生の原因となる場合があるため、各業務を分掌することがポイントになります。
管理規程に含められる主な内容は以下になりますが、作成の際は各企業の必要に応じて追加・削除が必要になるでしょう。
・購買先の選定
契約書の締結、相見積もり取得、取引先の信用調査など
・納期管理
納期確保、納期変更の際の各部署への連絡 など
・検収
購入した各部署による検収、不良品などの扱い など
・支払い
経理部による支払い など
・その他
帳票の書き換え禁止 など
購買管理システムを導入する
購買管理の不正やミスの多くは、手作業で膨大な数の書類や伝票を確認する中で発生していると言われています。
そのため、購買管理システムを導入して人為的な操作を減らし、データの共有で見える化することにより、不正やミスが少なくなることが期待されます。
購買管理システムのメリットや種類などを紹介
購買管理システムを導入する際には主な機能や特徴を理解をするところから始めましょう。
クラウド型など様々なタイプがありますので簡単にご紹介致します。
さらに、購買管理システムを導入した企業の成功事例も参考にしてみましょう。
購買管理システムの主な機能と特徴
購買管理システムには、複数のサプライヤーへの一括見積依頼や見積結果の比較機能、発注や仕入れ業務の効率化、購買コスト削減など多様な機能があります。
これらの機能を活用することで作業の手戻りを減らし、業務効率を向上させることができます。
さらに、資材や備品の在庫状況を把握することができ、適切な発注タイミングを把握することができます。
クラウド型購買管理システムとは?
クラウド型購買管理システムは、サーバを自社内に保有する必要がなく、インターネット上のサーバにアクセスすることでシステムを利用することができます。
従来のオンプレミス型と違い、自社でのシステム構築や保守や更新作業などが不要となり、コストや手間が削減されます。
また、スマートフォンやタブレットなどのモバイルデバイスからも利用できるため、外出先からの発注や在庫確認なども可能になったり、導入コストやランニングコストを安く済ませることができるのもメリットです。
購買管理システムを導入した企業の成功事例
購買管理システムを導入することで、購買業務の効率化やコスト削減や資材の在庫可視化などのメリットがあります。
ここでは、購買管理システムを導入し成功した実際の事例を紹介します。
・製薬会社の事例
購買管理システムの導入により見積依頼や発注が一括で実行できるため、購約30%の作業時間短縮が実現されました。
さらに、ペーパーレス化にも成功されています。
このように、購買管理システムの導入により業務の簡素化と効率化が実現され、コスト削減につながった例が多く見られます。
・自動車部品メーカーの事例
複数の工場にまたがる購買業務の一元管理を実現するために、購買管理システムを導入されました。
システムの導入により全社的な調達戦略の実施や調達先の選定、価格交渉の強化などが実現され業務効率化とコスト削減に成功されました。
導入前に比べて人的ミスの削減、納期の短縮、在庫の削減、そしてコスト削減など多くのメリットが報告されています。
・購買管理システムの導入に失敗したケース
ある企業では、システム導入後に必要なスキルの習得や運用方法の確立ができなかったことが原因で期待した成果を得られなかったという事例があります。
購買管理システムの導入には、運用方法の確立やスキルの習得などの準備が必要であり、システム導入だけで業務効率化が実現できるわけではありません。
以上、購買管理システムを導入し成功した企業の事例を紹介しました。
システムを活用するには、「適切なシステム選定」「運用方法の確立」「業務フローの見直し」「従業員がシステムを使える教育」などの慎重な準備が必要ですが、成功すれば業務効率化やコスト削減、資材の在庫可視化など、多くのメリットが期待できます。
購買管理システムを導入するメリット
購買管理システムとは、それまで人の手で入力していた多くの数値を自動的に取得でき、少ない作業でより正確なデータを集めることができるシステムです。
エクセルのテンプレートやフリーソフトなども数多くあるため、経費を考えて無料のものを活用するというケースも多く見られますが、システムを導入することで時間短縮や入力ミスの防止が可能です。
これらのデータが共有されていなければ、せっかく購買管理規程を作成しても、購買状況がわからず確認作業に手間取ります。
その点、システムならあらゆる部署とデータを共有できるため、見える化が実現できます。
また、コンピュータごとに導入するソフトでは、自社で行うメンテナンスやセキュリティ対策も大変ですが、システムならアップデートも含め、結果的にコスト削減につながります。
近年では、SaaSやクラウドで購買管理ができるシステムも増えているため、多くの労力を減らすためにも積極的な活用が望まれます。
中小企業にも購買管理システムの導入がおすすめ!
購買管理システムの導入は大企業だけではなく、中小企業の方にもおすすめです。
購買業務を滞りなく行うためにも購買管理は必要不可欠ですが、それぞれの企業規模によって適切な購買管理が行われているかが最も重要です。
まだまだマニュアル作業から抜け出せない、もしくは様々な管理ソフトなどを使って業務の効率化を図っているという場合には、システム化することが有効かもしれません。
購買管理をはじめとする業務管理システムに興味を持たれた方は、ぜひ一度キャムマックスまでご相談ください。一緒に解決していきましょう。
キャムマックスは購買管理に加え販売管理、在庫管理も対応している中小企業向けシステムです
クラウド購買管理システムの中でもおすすめなのが、キャムマックスです。
キャムマックスでは、発注量の計算や発注点を決める作業をかわりにやってくれるだけでなく、最適な方法で自動化できます。
入荷と仕入れを同時に行い、リアルタイムで反映するため、在庫の時間差もほとんど発生しません。
また、キャムマックスは、中小企業に本当に必要な機能をカバーする目的で作られているため、購買管理に限らず、受注から会計までを一元管理できるのが特徴です。
この記事を書いた人
下川 貴一朗
証券会社、外資・内資系コンサルティングファーム、プライベート・エクイティ・ファンドを経て、2020年10月より取締役CFOとして参画。 マーケティング・営業活動強化のため新たにマーケティング部門を設立し、自ら責任者として精力的に活動している。