予実管理とは?目的、予実管理のプロセスからおすすめの管理方法
企業の経営目標達成のためには、目標までの達成状況をタイムリーに把握し、進捗が芳しくなければ素早く課題を特定し改善策を実行していく必要があります。
改善施策の実行に欠かせないのが、進捗把握のために行う予実管理業務です。
予実管理業務をしっかりと行い、事業の現在の状況を正確に捉えることで、目標達成に向けた適切な施策を実行することができます。
目次
予実管理とは
「予実管理」とは事業計画や予算を立て、実績と比較して管理し、業績の改善を図る管理手法のことです。
予実管理は企業が目標を達成するために必要な予算の設定、実績の把握、進捗管理、課題解決、業務改善などの業務に役立ちます。
具体的には、売上高、費用、利益などを見積もり、その結果を基に予算を立てます。
そして、実績を計測し予算との差異を比較することで進捗状況が把握できるので、問題点を洗い出し改善策を講じることができます。
このように、予実管理によって企業は自社の業績を正確に把握し、適切な経営判断を下すことができます。
予実管理の目的と重要性
予実管理の目的は、事業計画に基づいた予算を策定し実績と比較して業績の進捗状況を把握することで、課題を明確に業務改善につなげることです。
予実管理を行うことで、収支の見通しが立てやすくなり資金繰りの改善にもつながります。
また、部門や担当者ごとに目標を設定することで達成度を評価することができるため、業務の透明性が高まります。
予実管理のポイント
予実管理でまとめた情報を元に企業は意思決定を行うため、予実管理にはタイムリーな情報更新や項目ごとの数値の正確性が求められます。
ここでは、予実管理を行うポイントを4つご紹介いたします。
適正な予算を設定
予実管理を意味あるものにするためには、予算の適正な設定が重要です。
予算が高すぎては達成までの道筋が見えず、社員のモチベーションに悪影響を及ぼし生産性の悪化に繋がる恐れもあります。
一方で予算が低すぎてしまうと容易に達成できてしまうため、社員のポテンシャルを引き出すことができず、新しいアイディアの創出や社員の更なる成長を阻害する可能性もあるでしょう。
予算の設定は組織運営にも深く関わる重要な業務といえます。
定期的にブレがないかの確認
予実管理を経営に役立てるには、定期的に予実を確認して事業の軌道修正をしていくことがポイントとなります。
そして、確認をする際に重要なのが売上や利益など個別の項目に対して1つずつ分析を行うことです。
仮に、売上の達成率が好調でも粗利益の達成率が芳しくなければ、営業社員は利益度外視の値引きを行い顧客を獲得しているかもしれません。予実の情報を元に起こっている状況の仮説を立て、指標を改善するための施策を考えていきましょう。
リアルタイムで見たい情報が見れるように
定期的に予実を確認することも重要ですが、いつでも正確な情報を見られる仕組みを作ることも目標達成に寄与します。
定期的に行う予実管理のタイミングでは、すでに軌道修正が間に合わないという状況もあるため、いつでも予実を把握できる仕組みを作り軌道修正のタイミングを早められるようにしましょう。
特に、達成率の悪い部署や個人には早期の支援が重要となるため、こまめにチェックするフローの構築を行ってください。
細部までこだわりすぎない
予実管理はあくまでも経営目標達成のための手段であり、管理そのものが目的ではありません。
予実管理の失敗例としてありがちなのが、細かい数値の整合性が取れず確認作業に時間を費やしてしまうケースです。
正確な数値を出すことも重要ですが、予実管理のデータを元に素早く意思決定をする方が優先順位が高いため、データの正確性よりも反映させるスピードを重視しましょう。
予実管理を行うことでうまれるメリット
それでは予実管理を行えば、企業にとってどのようなメリットがうまれるのかをご紹介していきます。
業務効率がよくなる
予実管理を行うことで、以下のような業務効率化が期待できます。
情報共有の促進
予実管理を利用することで、業務の進捗状況や予算の進捗状況を共有することができます。情報共有がスムーズになることで、業務の進捗管理や改善策の検討が円滑に進みます。
課題の早期発見
予実管理によって、予算と実績の差異を把握することができます。早期に課題を発見することで、改善策を早期に検討し、業務効率を向上させることができます。
業務のスピードアップ
予実管理を利用することで、業務の進捗状況や課題の把握がスムーズになるため、業務のスピードアップにつながります。
収益を最大化できる
予実管理を活用することで、以下のような収益の最大化が期待できます。
予算の最適化
予実管理を利用することで、予算の使い道を見直すことができます。無駄な予算を削減することで、収益の最大化を図ることができます。
業務の改善策の検討
予実管理を活用することで、業務の課題を把握することができます。課題を解決する改善策を検討することで、業務の効率化を図り、収益の最大化を図ることができます。
競合他社との比較分析
予実管理によって、競合他社との比較分析を行うことができます。競合他社との差異を把握し、自社の課題を把握することで、改善策を検討することができます。
以上のように、予実管理を活用することで、業務効率化や収益の最大化を図ることができます。
ただし、予実管理を活用するためには、適切なツールやシステムを使うことが必要です。また、データ収集や分析に関する知識やスキルも必要です。
経理部門が予実管理を担当する場合は、その知識やスキルを持つことが必要となります。
予実管理においては、単にデータを集めるだけではなく、そのデータを分析し、業務に反映させることが重要です。データを分析することで、課題や問題点を把握し、改善策を検討することができます。また、データを共有することで、情報の透明性が高まり、より効率的な業務運営が可能となります。予実管理を導入することで、経営戦略の立案や業務の改善、収益の最大化など、様々なメリットが得られます。
予実管理を行う際の注意点
予算の策定において、十分な情報を収集することが重要です。過去のデータや市場動向、競合情報などを参考に現実的な予算を策定し、予算の詳細な内訳を作成し部署ごとに配分することが必要です。
予実管理は継続的な作業であるため、1か月に1回など定期的な振り返りを行うことが必要です。また、予算の修正や再評価が必要な場合には、迅速に修正しましょう。
予算の設定における注意点
目標を設定する際には、企業の成長性や市場動向などを考慮することが大切です。
適切な目標を設定することで、モチベーションの向上や成長性の確保が期待できます。
目標が高すぎるとストレスになり、逆に低すぎると成長性が見込めなくなる可能性がありますので予算の設定には実績や現状分析を基にした適切な数字の設定が必要です。
実績の収集における注意点
実績の収集には、正確な情報を得るためのシステムやツールが必要です。手作業での収集は誤りが生じる可能性が高いため、会計ソフトなどの導入が望ましいです。
また、単に売上高を把握するだけでなく、商品ごとの売上高や地域別の売上高など、詳細な情報を定期的に収集する場合はクラウドERPシステムなどを活用しましょう。
そのうえで週次、月次、四半期ごとなど適切な頻度で実績を収集し予算と比較しPDCAをまわしましょう。
比較分析における注意点
比較するデータやグループは、同じ条件で比較することが重要です。たとえば、同じ期間や同じ地域のデータを比較する場合には、データの取得方法や計測方法などが一致しているか確認する必要があります。比較する要素が多い場合には、分析方法を適切に選択しましょう。たとえば、3つ以上のグループを比較する場合には、分散分析を行うことが適切です。
予実管理を行うプロセス
予実管理を行うプロセスは、「予算の設定」「実績の確認」「予実の比較」「改善策の策定・実行」の4つのフェーズに分けられます。
これらのプロセスを1つずつしっかりと行うことは目標達成の可能性を上げることに繋がるでしょう。
目標、予算を設定
年度の初めや期初、四半期の初めなどに目標となる予算の設定を行います。
予算は高すぎても低すぎても意味をなさないため、過去の実績や時期要因などを考慮し、適切な予算を設定しましょう。この時、業界全体の成長率や顧客ニーズの変化、社会情勢といった外部要因を参考にすることも有効です。
毎月実績を確認
実績は最低でも月に1回は必ず確認し、現在の経営状況を把握するようにしてください。
可能であれば毎月の月末など決まったタイミングで確認を行うと、各月との比較がしやすくなり、より状況の把握がしやすいためおすすめです。
予算と実績を比較
実績を確認する際に、予算との対比も併せてチェックしましょう。
予算と実績を比較することで、それぞれの項目での達成状況を把握して、経営状況の認識と課題の特定を行います。
達成率が悪い項目に着目して改善策を立てるのがセオリーですが、注意すべきポイントは、予算設定が各項目ごとに適切であったかを再度確認して、誤った対策を取らないようにすることです。
改善に向けた対策の実行
予実を分析して改善策を立案したら、現場を巻き込んで実行に移しましょう。
改善策を実行する際には、「正しく施策は実行されたか」「実行した結果、数値や状況に変化はあったのか」の2点を必ず確認し、改善策の結果を振り返りましょう。こうした確認作業を行うことで、以降の予実管理と改善策の質を高めることに繋がります。
予実管理をエクセルやスプレッドシートで行う方法
スプレッドシートやエクセルは手軽に利用できるため小規模な予実管理には便利ですが、大量のデータを扱う場合や複数のユーザーで共有する場合にはシステムを使った予実管理が適しています。
システムを使った予実管理は、事前に販売価格など計測に必要なマスタを登録しておけば自動処理によりデータが読み込まれ、スプレッドシートよりも細かい分析ができます。
Excelテンプレートの比較と選び方
予実管理に適したツールやExcelテンプレートを選ぶ際には、以下のようなポイントを考慮することが重要です。
・予算と実績の比較を容易に行えるかどうか
・グラフやチャートの自動生成機能があるかどうか
・カスタマイズが容易に行えるかどうか
・使いやすさや直感的な操作性はあるかどうか
・セキュリティ対策がしっかりとされているかどうか
また、企業の業務内容や予実管理のスタイルに応じて、必要な機能やカスタマイズの範囲も異なるため、自社に最適なツールやテンプレートを選ぶことが重要です。
以上のポイントを踏まえて、複数のツールやテンプレートを比較検討し、自社に最適なものを選ぶことが予実管理の成功につながります。
予実管理ができるエクセルテンプレート
予実管理におすすめのExcelテンプレートは、以下のものがあります。
これらのテンプレートは、無料でダウンロードでき、企業の業務に合わせてカスタマイズすることも可能です。また、多くのテンプレートでは、予算と実績を比較するためのグラフも自動生成されるため、分析作業が簡単になります。
ただし、企業によって業務内容や予実管理のスタイルが異なるため、必ずしも上記のテンプレートが最適なものとは限りません。自社の業務に合わせたカスタマイズや、新たにテンプレートを作成することも必要になるかもしれません。
予実管理にはERPなどの管理ツールがおすすめ
予実管理では多くのデータを集計する必要があるため、紙などのアナログな方法での管理は困難です。
また、適切な予実管理は、ツールを用いてデータ集計を自動化することで正確性を高め、タイムリーに情報の反映を行うことが重要です。
予実管理ツールとして主に使われるのが「SFAツール」、「クラウドERP」の2つがありますので、それぞれ解説いたします。
予実管理をSFAツールで行う方法
営業支援ツールであるSFAを活用することで、効率的な営業現場への支援が行える予実管理を実現します。
SFAツール内で売上や利益といったデータ集計や分析ができることはもちろん、顧客情報もツール内で管理されています。そのため、予実管理と顧客情報を照らし合わせれば、特定の部門に対しての支援や、顧客への営業戦略の見直しをスピーディーに行うことが可能です。
予実管理をクラウドERPで行う方法
クラウドERPは企業のバックオフィス業務全般のデータを場所や時間を問わずにデータにアクセスでき、また複数のユーザーでデータを共有できるため、バックオフィス全般の効率化に繋がります。
クラウドERPには在庫管理や会計管理機能なども備わっているため、予実を元にした需要予測からの在庫数の調整や、原価管理や資金繰り管理などを予実管理と併せて行うといったことが可能です。
その他にもセキュリティ対策、システム構築、メンテナンスなどの負荷が少なく、コスト削減にもつながるため多くの企業で採用されています。
予実管理はダッシュボードを活用しましょう
予実管理をする場合、会計ソフトやERPシステムなどのダッシュボードを活用する方法はおすすめです。
ダッシュボードは、一覧性の高いグラフや表を用いて予算と実績の比較や予測を行うことができまので、業績の可視化や問題の発見・改善が容易になります。
システムの活用方法には、以下のようなものがあります。
・データの自動更新
システムを活用する際には、業績データを自動更新することが重要です。
手動でデータを更新するとヒューマンエラーが発生したり確認作業の工数が発生しますので
・グラフの活用
システムのダッシュボードには、予算と実績の比較グラフや進捗状況グラフなどを活用することができます。グラフを活用することで、業績データを視覚的に把握することができ、問題の発見・改善に役立ちます。
・重要な指標の設定
経営目標に関連する重要な指標を設定することができます。重要な指標を設定することで、経営目標に対する進捗状況を把握することができます。
・リアルタイムでの可視化
業績データをリアルタイムで可視化することができます。リアルタイムで業績データを把握することで、問題が発生した場合に早急な対応が可能となります。
このように、会計システムやERPシステムを活用することで、予実管理がリアルタイムで正確に見えるようなります。そこで問題点を洗い出すことで経営の判断材料になります。
キャムマックスは予実管理もできるクラウドERPです
キャムマックスはバックオフィス業務を広く支援するクラウドERPであり、予実管理機能も備えているツールです。
キャムマックスの予実管理機能はデータの抽出と分析に関する機能が充実しています。
例えば、データを部門や担当者、商品別など分類を自由に設定して集計が可能であるため、企業ごとに分析に必要なデータを即座に得ることが可能です。
この記事を書いた人
下川 貴一朗
証券会社、外資・内資系コンサルティングファーム、プライベート・エクイティ・ファンドを経て、2020年10月より取締役CFOとして参画。 マーケティング・営業活動強化のため新たにマーケティング部門を設立し、自ら責任者として精力的に活動している。