在庫とは?種類やその役割から業種別対策まで ~製造・小売・ECにおける在庫の最適解を解説
在庫とは、販売や製造のために保持している物品や材料などを一時的に保有している状態を指します。製造業であれば原材料や部品、小売業であれば商品の在庫を抱えておくことで、顧客のニーズや生産計画の変化に柔軟に対応できます。こうした在庫の確保により企業は安定的かつ柔軟に製品や商品を提供できます。
ただし、在庫は必ずしも多ければ良いというものではなく、在庫を過剰に保有すれば保管コストが増加するほか、長期間滞留することで廃棄へのリスクが高まる恐れがあります。
反対に在庫が少なすぎれば、顧客に対して迅速に商品を提供できず、信頼を損ねたり販売機会を逃したりする可能性があるため、適切な在庫管理が非常に重要となります。
製造・小売業における在庫の違い
- 製造業
製品が完成するまでの工程には「原材料」「仕掛品」「完成品」といった段階ごとの在庫が存在します。原材料はまだ加工が施されていない素材、仕掛品は原材料を加工しまだ完成していない製造工程の途中にある状態、完成品は加工が完了し出荷を待っている最終製品を指します。原材料や仕掛品の管理は生産効率や原価に直結するため、精度の高い在庫管理が重要です。
- 小売業
販売を目的とした「商品在庫」が中心となります。店舗に陳列している在庫だけでなく、バックヤードや倉庫で保管している在庫も含まれます。小売業では実店舗やECサイトなどの需要に対応するため、販売機会を逃さないよう十分な在庫を確保しながらも過剰在庫による売れ残りを避けるための工夫が必要です。
このように、製造業と小売業では在庫が担う役割や管理方法がそれぞれ異なります。業種ごとの特性に応じた在庫管理体制の構築が利益の最大化につながります。
会計上の棚卸資産
在庫は貸借対照表において「棚卸資産」として扱われます。つまり、将来的に(流動資産に区分されるため1年以内に)売上を計上して企業に利益をもたらす資産と見做されます。
この棚卸資産は、企業の資産価値や利益計算に直接影響を与えます。在庫が多ければ資産は大きく見えますが売れなければ実質的な価値は伴いません。一方、在庫を効率よく回転させている企業は資産を有効に活用していると言えるでしょう。
在庫が果たすビジネス上の役割
在庫は単なる商品や資材のストックではなく、企業活動を支える最も重要な事業基盤の一つです。
販売の現場では在庫があるからこそ、顧客が欲しいときにすぐに商品を提供できます。製造の現場では材料や部品の在庫があることで生産ラインを止めずに済みます。
つまり、在庫はただのモノの集まりではなく事業の安定性と継続性を支える「備え」としての機能を持っており、売上やサービスの品質を目に見えないところで支えています。
在庫の分類・種類
① 商品在庫
販売される段階にある在庫を指します。小売業では、店舗の店頭や倉庫に保管されている販売用の商品が該当します。一方、卸売業では、メーカーなどから仕入れた商品を別の企業に販売するまでの間に保有する在庫がこれに当たります。企業にとっては売上を生み出す源泉である反面、長期間保有すると保管コストの増加にもつながります。そのため、需要と供給のバランスを踏まえた上で適切な在庫水準を維持することが重要です。
② 原材料在庫
製造業などにおいて製品を生産するために必要な素材や部品を指します。これは製造工程における最初の段階にあたる在庫であり、不足すれば生産ラインの停止につながる可能性があるため、安定供給を見据えた計画的な原材料の発注が求められます。一方で、必要以上に原材料を抱えると保管にかかるコストやスペースの負担が増大します。そのため、需要予測や生産計画に基づき、適正な在庫水準を維持することが重要です。
③ 仕掛在庫
製品がまだ完成していない製造工程の途中にある状態の在庫を指します。複数の工程を経て生産が行われる場合、その途中段階で一時的に停留している部品や製品が該当します。仕掛在庫が過剰に増えている場合は、工程のどこかに滞留や非効率が生じている可能性があります。そのため仕掛在庫の量は、生産ライン全体が適正に稼働しているかどうかを確認する上で重要な管理指標となります。
④ 製品在庫
出荷や販売を待っている完成品の在庫を指します。企業にとってはすぐに出荷して売上を計上できる状態の在庫であり、販売機会に直結する重要な資産となります。需要が読みづらい製品については一定量をあらかじめ用意しておく必要があるものの、過剰に保有すれば長期在庫化や収益圧迫のリスクを伴います。そのため需要予測に基づき、過不足のない適正な在庫水準を維持することが求められます。
⑤ MRO在庫
MROとは、Maintenance(保守)、Repair(修理)、Operations(運用)の頭文字を取った言葉であり、設備の維持や修理、日常業務の継続に必要な資材・用品の在庫を指します。例えば、工場内で使用する工具や清掃用品、機械の交換用部品、潤滑油、作業着、保護具などが該当します。これらは売上に直結するものではないものの、安定した生産業務を支える上で欠かせない在庫です。
その他の在庫
この他にも業界や業務の特性に応じて様々な形態の在庫が存在します。
- 安全在庫
需要の急激な変動や供給の遅延が発生した場合でも欠品を回避するために、あらかじめ確保しておく在庫のことです。
- デカップリング在庫
工程や部品(パーツ)ごとに生産スピードが異なる場合、片方の作業が止まらないように調整するための在庫です。それぞれの工程間を円滑につなぐために一時的に保有され、生産ライン全体のスムーズな稼働を支える役割を担います。
- 輸送中在庫
商品の移動中に発生する在庫で、すでに出荷されているもののまだ最終拠点には到着していない状態の在庫を指します。
適切な在庫管理が必要な理由
欠品防止と顧客満足度の向上
顧客は「欲しいときに、欲しいものが手に入る」ことを前提に購買行動を選択します。そのため在庫切れは単なる販売機会の損失にとどまらず、顧客の信頼を損ねる原因となり、場合によっては競合他社への流出を招く可能性もあります。
特にBtoCビジネスにおいては、ECサイトや店舗での欠品が売上の減少につながるだけでなく、SNSやレビューサイトを通じて否定的な評価が広がるリスクも伴います。BtoBの取引においても、納品の遅延が取引先の生産計画や事業に影響を及ぼしビジネスパートナーとしての信用を低下させる恐れがあります。
リスクを防ぐためには適正在庫の確保と需給変動に柔軟に対応できる体制の整備が不可欠です。このような取り組みによって顧客との信頼関係を維持しつつ、リピート購入や長期的な取引継続といった成果につなげることができます。
キャッシュフロー・資金繰りの安定化
在庫は「流動資産」に分類されますが、現金のように即座に利用できるわけではありません。実際に売上として回収されるまでは資金ではなくモノの形で留まっている状態であり、キャッシュとしての機能は果たしません。そのため在庫の保有状況は、企業の資金繰りに直接影響を与えます。
過剰な在庫を抱えている場合、それだけ多くの原材料や製品が固定され現金化までのタイムラグが長くなります。この状態が続くと運転資金の確保が難しくなる可能性もあります。
つまり、仕入れと支払い、製造・生産、販売、そして売掛金の回収までのサイクルを最適化してキャッシュフローを圧迫しない最適な在庫水準を維持することが重要です。
コスト削減
在庫は貴重な資産ですが、その一方でリスクとしての側面も持っています。在庫を保有するということは常にコストとリスクが発生している状態でもあります。
- 保管コスト
倉庫代や空調、保険、人件費など、在庫を維持するためにはさまざまな間接的なコストがかかっています。特に、回転が遅い商品や季節商品、トレンド商品などは長期間保管されることでコスト増につながり、利益を圧迫する原因になります。
- 市場価値の低下・劣化のリスク
食品や化粧品のように使用期限が定められている商品はもちろん、家電やアパレルといった商品も技術の進化や流行の変化により短期間で市場価値が下がる可能性があります。こうした在庫が売れ残った場合は「不良在庫」となり、最終的に値下げ処分や廃棄を余儀なくされます。
リードタイム短縮による生産性向上
製造業においては、リードタイム(原材料の調達から納品までに要する時間)をいかに短縮できるかが生産性に大きく影響します。
材料や部品を必要なタイミングで確保しておくことで、生産計画や出荷スケジュールに遅れが生じるリスクを最小限に抑えられます。反対に在庫が不足している状態だと生産ラインの停止や出荷遅延といった問題を引き起こし、納期の遅延や顧客満足度の低下につながります。
必要な原材料在庫を維持しながら安定した生産体制を確保することで納期を遵守できます。
業種・事業別における在庫管理のポイント
【製造業の場合】
製造業における在庫管理では、リードタイムを常に意識しながら製造工程全体を把握して無駄のない運用体制を構築していくことが重要です。
原材料の調達から生産、出荷に至る各工程のリードタイムが長くなれば、それに比例して在庫を多く抱える必要が生じ、過剰在庫による保管コストの増加や廃棄ロスといった問題を引き起こします。いかに生産と供給の流れを滞らせず在庫の最適化を図るかという視点が不可欠です。
工程間の在庫の見える化
製造現場においては、加工途中・検査待ち・組み立て前など、いわゆる仕掛かり状態の在庫が多数存在します。これらは最終製品ではないため把握がしづらく、管理が不十分になりやすい傾向があります。しかし工程間の在庫を放置したままにすると予期せぬ滞留や生産性の低下を招く恐れがあります。
そのため製造業においては、各工程ごとの在庫状況を正確に把握して「どこに、どれだけの在庫が存在しているのか」を可視化できる体制の構築が不可欠です。これにより工程上のボトルネックの特定や在庫の偏在を防ぎます。
在庫の見える化とは単なる情報の収集にとどまらず、生産計画の見直しや工程の最適化、人員配置の判断など全体の質を高めるための重要な施策となります。
在庫削減と生産効率向上の両立
在庫削減と生産性の向上はトレードオフの関係にあると言えます。十分な在庫を確保すれば生産は安定しますが、その分在庫が滞留して保管などのコストが増加します。一方で、在庫を最小限に抑えれば過剰在庫へのリスクは低下すものの、原材料などの不足による生産の遅延や、卸先などへの販売機会の逸失、その結果の顧客満足度の低下といったリスクが高まります。
製造業においては、このバランスをいかに両立させるかが重要なポイントとなります。
この両立を実現するには「ムリ・ムダ・ムラ」をできるだけ取り除いていくことが求められます。生産計画と現場が連動していなかったり、需要予測が不確かなまま材料を調達していたりすると、結果として在庫の過不足が生じて、品質、コスト、納期に悪影響を与えます。
こうした課題を解消するには、在庫管理と生産管理を一元的に行えるシステムの導入が必要です。
【小売業の場合】
小売業においては、店頭に陳列された商品が実際に売れて初めて利益が生まれます。限られた売り場スペースを最大限に活用するためには、売れ筋商品の欠品を防ぎつつ適切な在庫の回転率を維持することが重要です。また、動きの鈍い商品については過剰在庫とならないよう在庫量を適切にコントロールする必要があります。
販売実績をもとにしたタイムリーな発注はもちろん、過剰在庫となっている商品は割引やセールなどを展開し、適切な調整を行うことが必要です。店舗や地域によって需要の傾向が異なることなどを踏まえ、それぞれの売れ行きに応じた在庫量を見極めることも在庫最適化を図る上で大きなポイントとなります。
POSデータの活用と在庫回転率向上
近年では、データ分析ツールやPOSシステムの普及により実際の販売実績に基づいて発注のタイミングや数量を的確に調整できる環境が整いつつあります。小売業において日々の売上データを自動的に記録・蓄積するPOSシステムは、在庫管理の中核を担う重要なツールと言えるでしょう。
算出される在庫回転率をもとに、回転が速い商品を優先的に展開することで売上効率を大きく向上させることも可能です。
また、データ分析ツールによる売れ筋商品の傾向、季節変動の分析、曜日別の販売ピークの予測など精度の高い分析によって「持つべき在庫」と「見直すべき在庫」を戦略的に分類することで在庫の最適化を図ることができます。
システムの活用により現場の経験や勘に頼ることなく、客観的なデータに基づいた意思決定を行うことが重要です。
【EC事業の場合】
EC事業における在庫管理は、従来の実店舗中心の小売業とは異なり、複数のカートやモールといった販売チャネルを横断して在庫を管理する必要があります。しかし、各チャネルの在庫を個別に管理していると誤出荷や欠品、販売機会の損失といったリスクが高まります。
こうしたリスクを抑えながら、業務効率と顧客満足の両立を図るにはオムニチャネルに対応したシステムの導入が欠かせません。
在庫を一元管理できるシステムの導入がカギ
システムを活用することで顧客の注文と同時に在庫の引当てが可能になります。チャネルごとの在庫管理を一元化できる上、欠品や二重販売といったトラブルも防止できます。
また、倉庫内におけるピッキングリストの自動生成や在庫数の自動更新といったデータが連動することで、受注処理から出荷までの業務もスムーズに行えます。
注文から発送までの時間短縮は、顧客満足度の向上にもつながります。
こうした観点からもシステム導入は単なる業務効率化にとどまらず、競争力のあるEC運営を支える基盤として欠かせない要素と言えるでしょう。
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多くの中小企業では、アナログな方法に依存した在庫管理が行われているケースが少なくありません。
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小売業では「現場主導の意思決定」をデータで支援!
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この記事を書いた人
下川 貴一朗
証券会社、外資・内資系コンサルティングファーム、プライベート・エクイティ・ファンドを経て、2020年10月より取締役CFOとして参画。 マーケティング・営業活動強化のため新たにマーケティング部門を設立し、自ら責任者として精力的に活動している。