物流DXとは?今すぐ進めなければならない理由や事例を解説
物流DXとは?今なぜ急務となっているのか、そして物流DXの導入によってどのようなメリットがあるのかについて解説します。
こちらの記事では、実際に物流DXを進めている企業の事例も合わせてご紹介します。
目次
物流DXとは?
物流DXは、物流業界においてデジタルトランスフォーメーション(DX)を実施することを指します。
「デジタルトランスフォーメーション(DX)」は単なるデジタル化とは異なり、ビジネスモデルの変革までを含む言葉で、物流DXではIoT、AI、ロボティクス、ビッグデータなどの最新テクノロジーを活用し、物流プロセスを効率化し、顧客ニーズに応える革新的なサービスを提供することを意味します。
物流DXの具体的な内容としては、配送ルートの最適化、在庫管理の改善、商品の追跡と監視などが挙げられます。
物流業界の現状と課題
どの業界であってもDXの推進は必要であると言われていますが、物流業界では特にすぐにでも対策しなければ大きな影響が出てしまうような現状があります。
EC市場の成長
市場拡大に伴う物流需要の増加
経済産業省「令和2年度 電⼦商取引に関する市場調査」によると、EC市場の年平均成長率が10%以上となっており、物流業界は配送量の増加に対応するための効率的な物流システムの構築と、迅速な配送サービスの提供が求められています。
カスタマイズされた物流サービスへの需要
消費者の期待は高まる一方で、単に商品を届けるだけでなく、時間指定の配送や環境への配慮を考えたパッケージングなど、より個別の配送オプションが求められています。
物流業界は、これらの新しい要求に応えるために柔軟性とイノベーションを組み合わせた取り組みが必要です。
労働力不足
人手不足の現状とその影響
第1回官民物流標準化協議会「物流標準化と物流現場の現状」によると、貨物自動車の運転手の求人倍率は他の職種と比べて3倍以上も高く、平均年齢も3〜5歳ほど高齢化が進んでいます。特にトラックドライバーや倉庫作業員の不足は、配送の遅延やサービス品質の低下につながっています。
この問題には、業界全体の労働環境改善や給与体系の向上など、根本的な解決策が必要です。
技術導入による労働力問題の緩和
労働力不足の問題に対処するため、多くの企業は自動化技術やロボティクスの導入を進めています。
これにより、作業の一部が機械によって代替され効率性と生産性が向上する可能性がありますが、一時的な解決策にすぎません。
労働力問題を解決し生産性をあげるには、時代に合わせた技術革新を取り入れ、長期的に人材を育成することが理想です
ガソリンの高騰
燃料コストの上昇とその影響
近年、ガソリン価格の上昇が物流業界に負担をかけています。
燃料コストの上昇は運送コストの増加を意味し、それに伴い消費者への送料の引き上げが検討されています。
多くの小規模運送事業者では、経営上の最重要課題として取り組んでいます。
エコフレンドリーな運送手段への転換
燃料コストの上昇に対応するため、多くの物流企業はエコフレンドリーな運送手段への転換を図っています。
電気自動車やハイブリッド車の導入は、長期的な燃料コストの節約と環境への負荷軽減に有益な手段といえます。
小口宅配便の増加
配送量の増大とその管理の複雑化
EC市場の拡大に伴い、小口宅配便の需要が急速に増加しています。これにより、物流業界は大量の配送を効率的に管理する必要に迫られています。
配送量の増大は、配送ルートの最適化や配送センターの効率的な運用といった課題を生み出しており、これらの課題に対応するための革新的なソリューションが求められています。
顧客満足度の維持と向上
小口宅配便の増加は、迅速かつ正確な配送はもはや基本要件であり、顧客満足度を維持・向上させるためには、配送の透明性を高める技術(配送車両の現在位置や空き状況などの可視化)や、顧客とのコミュニケーションを円滑にすることが必要となります。
2024年問題
トラックドライバーの労働時間規制とその影響
2024年4月から、トラックドライバーの時間外労働に960時間の年間上限が設定されます。
これは「物流の2024年問題」として知られ、物流業界に大きな影響を及ぼすと予想されています。
この規制により、ドライバーの労働時間が短縮されることで輸送能力が不足する可能性が高まっており、
国の試算によると、何も対策を行わない場合、2024年にはトラックの輸送能力が14.2%、2030年には34.1%不足するという結果がでています。
荷主とトラック事業者の連携による対策
この問題に対処するためには、荷主とトラック事業者の協力が不可欠です。
具体的な対策としては、荷待ち時間や待機時間の削減、予約システムの導入、入出荷体制の見直し、作業削減、労働環境の改善などが挙げられます。
また、パレット化による手荷役作業の削減や、情報の共有化、DX(デジタルトランスフォーメーション)による業務効率化も重要です。
IT化が進んでいない
デジタル化の遅れとそのリスク
多くの物流企業では、IT化が十分に進んでいないのが現状です。
これにより、入荷から出荷までの物流管理がデータ化されず現状の問題点なども不明確のまま業務をしなければいけません。
デジタル化の遅れは、競争力の低下や顧客サービス品質の低下のリスクをもたらす可能性があります。
デジタルトランスフォーメーションの必要性
物流業界におけるIT化の遅れを克服するためには、デジタルトランスフォーメーションが不可欠です。
これには、クラウドベースの物流管理システムの導入、ビッグデータ分析の活用、AI技術を用いた効率化などが含まれます。
デジタル化は、業務の効率化だけでなく新たなビジネスモデルの創出にもつながります。
物流DXのメリット
物流DXを進めてもどんなメリットがあるのかわからないという方も多いですが、大きな枠組みで見ると以下のような利点があります。
業務効率が上がる
自動化と最適化による作業効率の向上
物流DX(デジタルトランスフォーメーション)を通じて、物流業務の自動化と最適化が可能になります。
これにより、手作業による時間の浪費やヒューマンエラーが減少し、全体的な作業効率が大幅に向上します。
例えば、AIを活用した在庫管理システムは、在庫を正確に監視し必要に応じて素早く補充することで、倉庫の運用をスムーズにします。
リアルタイムデータによる運送管理の効率化
リアルタイムデータの活用により、配送プロセスの透明性が高まり、運送管理が効率化されます。
GPS追跡システムやIoTデバイスを用いることで、荷物の正確な位置情報を把握し、配送ルートの最適化や配送状況のリアルタイムなモニタリングが可能になります。
コストが削減できる
運送コストの削減と資源の最適利用
物流DXによる効率化は、運送コストの削減に直結します。
例えば、配送ルートの最適化により燃料消費が減少し、運送にかかるコストが低減されます。
また、データに基づく在庫管理により過剰在庫や在庫不足による損失を軽減することができます。
人件費の削減と効率的な人材配置
自動化技術の導入により、人件費の削減が期待できます。
特に、繰り返し行われる単純作業の自動化は、人材をより戦略的な業務に配置し直すことを可能にし、全体的な運営コストの削減に貢献します。
意思決定が迅速になる
データ分析に基づく迅速な意思決定
物流DXにより収集される大量のデータは、より迅速で正確な意思決定を可能にします。
ビッグデータ分析やAIの活用により、市場動向、顧客の要望、供給チェーンの状況などをリアルタイムで分析し、速やかで効果的な意思決定が可能になります。
リスク管理と将来予測の向上
データドリブン経営は、リスク管理と将来予測の精度を高めます。
市場の変動や異常気象などの外部要因に対する迅速な対応や、中長期的なビジネス戦略の策定において、正確なデータ分析は不可欠です。
これにより、不確実性の高いビジネス環境においてもある程度のリスクを想定した、より効果的な運用が可能になります。
国内企業による物流DXの取り組み
国土交通省が公開した「物流・配送会社のための物流DX導入事例集」には、物流業務のDXによる業務や働き方改善の事例がまとめられています。
その中からいくつかの事例をピックアップしてご紹介します。
倉庫のデジタル化の事例
アメリカの冷暖房機卸売業者であるJohnstone Supplyでは、複数倉庫を一元管理できるWMSの導入で一時的な繁忙期にも対応できるようになりました。
物流DXを進める上で導入したクラウド型在庫管理システムで、在庫管理や、注文・調達、機器、従業員管理まで一貫した様々な情報を可視化し、スタッフの生産性が大幅に向上しました。
倉庫のデジタル化・自動化・機械化の事例
佐川グローバルロジスティクスの物流DXでは、RFID(Radio Frequency Identification)と仕分けシステムの導入で入出荷検品、仕分けの生産性向上を実現しています。
商品につけたRFIDを認識させて検品を行い、RFIDゲートを通す瞬間に検品が完了することで、作業スキル修得時間の約7割削減や仕分けミス削減につながりました。
配送のデジタル化の事例
湯浅運輸では、物流DXに取り組むにあたり、輸送業務のデジタル化によりペーパーレス化と事務員の業務効率化を実現しています。
受発注管理、配車管理、運行管理、会計管理、労務管理、調達管理などに関して荷主と輸送事業者をシステムでつなぐことで両者の業務を効率化し、ミスや業務時間削減やペーパーレス化を図りました。
物流DX導入における課題と解決策
物流DXの導入にはいくつかの課題が存在しますが、それぞれに対処する方法があります。
初期投資費用
まず、新しい技術を導入するには最初にまとまった費用がかかります。
特に中小企業にとっては、初期費用の負担が大きいと導入に踏み切れない場合があります。
この問題に対処する方法として、コスト効率の良いクラウドベースのシステムを採用したり、必要な機能やシステムを段階的に導入することで、初期の負担を軽減できます。
従業員のスキル不足や抵抗感
新しい技術を効果的に活用するためには、従業員のスキル向上も不可欠です。
また、変化に対する抵抗感を減少させるためには、従業員に対する継続的な教育とトレーニングも必要になってきます。
これらのトレーニングに従業員を積極的に参加させることで、スキルが向上し変化に対する抵抗感を軽減できます。
物流コストの高騰と効率化の必要性
物流コストの増加は、燃料価格の上昇や労働力の不足、そしてEC市場の成長による配送量の増加など、さまざまな要因が影響し物流業界における運送コストを押し上げ、企業にとって大きな負担となっています。
この状況に対処するため、業務の効率化が極めて重要です。
まずは物流プロセスの最適化、自動化技術を導入することで意思決定がスムーズになります。
これにより、作業の迅速化、コスト削減、そして顧客満足度の向上が可能になります。
特に、物流DX化を図りたい場合は課題に対処するためのカギとなり、企業が市場の変動に迅速に適応し持続可能なビジネスモデルを構築するための重要な手段と言えます。
物流DXで利用できるシステムをご紹介
物流DXと言っても業務によって活用できるシステムは多数あります。ここでは、どのようなシステムが利用できるのか確認していきます。
倉庫管理システム(WMS)
倉庫内の在庫管理や出荷指示などの物流DXの中心を担う倉庫業務管理を行うシステムです。
どの商品をどの場所に保管してどのタイミングで入出庫するかを管理し、在庫の入出庫状況や在庫状況をリアルタイムで表示することで在庫の状況を迅速に把握し、在庫管理の効率化を図ります。
また、在庫情報と受注情報を統合してピッキング指示書を自動生成することで、正確かつ迅速な商品のピッキングが可能になります。
輸送管理システム(TMS)
物流にかかわる各種データを分析して運送業務のスケジュール管理を行い、最適な輸送ルートを提案することができるため、配送時間の短縮や配車の最適化を通じて輸送コストの削減が可能になります。
これにより、輸送中の車両や荷物の状況をリアルタイムで把握することができ、配送遅延や荷物の紛失防止につながります。
IoTやAI
物流現場でセンサーを利用して情報収集を行い、そのデータを基に運送状況の可視化や最適化を行うほか、輸送機器の自動化などに活用できます。
AIを使って物流データを解析し、予測や最適化などの自動化を行うこともできます。
在庫管理システム
物流業務の中で重要な割合を占める在庫管理も、DXでシステム化すればリアルタイムで在庫数や在庫場所、保管期間などの情報を正確に把握することが可能になります。
適切な発注量を自動で計算するなどして在庫の過不足や廃棄品を防ぎ、在庫コスト削減につながります。
同一品目の商品であっても、製造日や入荷日、ロット番号などで区別することができ、保管期限の管理や在庫品質の管理が容易になります。
ERPシステム
物流に限らず企業の中で重要なのが会計などのバックオフィス業務です。
ERPシステムでは、倉庫・在庫管理や入出荷管理はもちろん、請求書の発行や支払管理などの業務を一元管理できるので、業務の正確性を高めることができます。
物流データや財務データなどのビジネス上の重要な情報をリアルタイムで把握することができるため、経営判断の迅速化や業務の効率化につながります。
継続的な改善とイノベーションの推進
継続的な改善とイノベーションの推進は、物流業界において持続可能な成長を達成し、新たなビジネスチャンスを生み出すための大きな要因となります。
業務プロセスの定期的な評価と改善に焦点を当て、業務の効率性・コスト・顧客満足度などの指標を用いたパフォーマンスをモニタリングし分析しましょう。プロセスの非効率な部分を特定し改善策を実施することで、業務の効率と生産性を高めることができます。
また、ドローンや自動運転車を用いた配送方法の革新、AIと機械学習を活用した需要予測の精度向上などのイノベーション活用施策を掲げ、物流プロセスを根本的に見直す必要性があります。
キャムマックスは倉庫・在庫管理機能で物流DXをサポートできるERPシステムです
キャムマックスは、中小企業向けに開発されたERPシステムで、バックオフィス業務だけでなく倉庫管理や在庫管理機能も充実しているため、これ1つで物流業務に対応できます。
物流業でDXを進めたいが、何をどうしたらよいのかわからないという企業様は、ぜひ一度ご相談ください。
キャムマックスならDXの困りごとをすべて解決できます。
この記事を書いた人
下川 貴一朗
証券会社、外資・内資系コンサルティングファーム、プライベート・エクイティ・ファンドを経て、2020年10月より取締役CFOとして参画。 マーケティング・営業活動強化のため新たにマーケティング部門を設立し、自ら責任者として精力的に活動している。