売上管理の方法まとめ|エクセル・アプリ・システムの比較と最適解
企業にとって、売上の管理は単なる記録ではなく経営の方向性を決定づける重要な業務です。
売上データを正確に把握し、日々の業績をリアルタイムで分析できる体制を整えることで、より迅速な経営判断が可能になります。
本記事では売上管理の基本から、代表的な管理ツールである「エクセル」「アプリ」「システム」それぞれのメリット・デメリットを詳しく解説していきます。
- 複数の店舗や拠点の売上を一元的に管理したい
- 各部署や店舗のデータを迅速に収集したい
- 既存のエクセルやアプリによる売上管理に限界を感じている
売上管理をする上で、こうした課題を抱えている方にぜひ読んでいただきたい内容となっています。
目次
売上管理とは?基本概念と重要性
「売上管理」とは、企業が売上目標を達成するために売上を記録・分析する業務です。日々の売上を記録し、目標までの差異や利益向上のための原因分析・課題の把握を行う、非常に重要な業務の1つです。
企業において、売上目標や予算の設定は重要になりますが、売上管理は月間、四半期、年間など一定の期間で売上目標を達成できているか確認し、目標に対し遅れをとっている場合には原因を分析し、目標達成に向けた軌道修正が必要です。
軌道修正をするには、売上管理表に日々の売上の記帳を行い、現状把握・分析を行うことで、企業経営の舵取りの方向性や打開策を打ち出していく必要があります。
売上管理を行う理由
売上管理を行う理由は、売上記録から現状把握・分析を行うことで、売上の安定化・改善を図り、目標達成に向けた取り組みを行うことです。
正確に売上を記録しておかないと、目標達成までの道筋や目標達成できていない原因の把握ができず、売上向上に向けた戦略設計を立てることが出来なくなります。また売上管理を行っておくことで、来期の成長見込みや今後の営業戦略などデータを元にした分析が行えるようになります。
そのため、売上管理は企業経営に関わる重要な業務であることを理解しておく必要があります。
売上管理において必要な項目
売上管理を行うには下記の項目に分けておくと、分析の際に非常に役立ちます。
- 売上高
- 予実管理 (予算・経費の消化状況)
- 前月/前年対比
- 原価と粗利
売上高
売上高とは、売上の実績です。売上管理において最も重要な数字の1つであり、売上高を成長させるために売上管理を行うといっても過言ではありません。
注意しなければいけない点としては、売上高はあくまで売り上げた金額であり、利益ではありません。利益は売上高から人件費や材料費などさまざまな経費を差し引いた金額になります。
分析を行うにあたって、売上の日時や売れた商品名、顧客情報、売上に繋がったチャネルなどを記録しておくといいでしょう。
予実管理 (予算・経費の消化状況)
予実管理とは、予算と実績を管理することです。売上や仕入など営業活動における数字が目標通りに推移しているかを確認し、管理することを予実管理といいます。
予実管理を行うことで、経営目標で設定した予算に対して実績が正しく推移しているかどうかを確認することができます。たとえば、仕入にかかった経費は目標設定時と大きく変化していないか、など目標達成ができていない際の原因把握に繋がります。
また、予算と実績が大きく乖離が発生している場合には、過去の数字を参考に、設定された予算が適切なものかどうかを判断することが可能です。
前月・前年対比
前月・前年の売上に対して、増減を把握することで経営戦略の効果を把握することができます。
前月・前年の実績と比べ、今月・今年度の進捗が良ければ、経営戦略が効果を発揮しているということがわかり、反対に進捗が好ましくなければ経営戦略の見直しが必要になります。
原価と粗利
原価とは、商品に必要な材料を仕入れるのにかかった費用のことです。売上と共に管理しておくことで、粗利(売上総利益)を把握することができます。
ある程度の原価がわかっていると売上管理とともに大体の利益も把握することができます。
売上管理のポイント|正確かつ効率的に管理するための秘訣
売上管理を行う際には、正確かつ効率的に行う必要があります。ここからは売上管理を実際に行う時に知っておくべきポイントについてご紹介します。
統一された雛形(フォーマット)を利用する
毎回、一から売上管理表を作成すると、記入項目の過不足が出てくる危険性があります。自社に適した雛形を利用し、効率よく入力・分析が行えるようにしておくようにしましょう。
また、雛形を用意しておくことで、来期の売上管理表を作成する際や経営戦略の見直し時、新規で事業を立ち上げた際などにも利用でき、効率よく売上管理を行えるようになります。
記入方法やルールを明確にしておく
売上管理表の記入は複数人で行うこともあり、それぞれの記入方法で管理を行ってしまうと、正確に売上管理をすることができません。
そのため、管理表に記入する方法や記入ルールを決めておく必要があります。記入方法やルールを会社全体であらかじめ共有しておくことで、業務の属人化や管理体制が整います。
データを活用する
企業が成長していくためには、売上管理を行うだけでは足りません。原価や粗利、目標との乖離をうまく理解し、いかに目標達成していくのかといった戦略設計までデータを分析・活用していく必要があります。
問題や課題に対する具体的なアクションを起こすまでが売上管理の業務だと認識しましょう。
エクセルで売上管理する方法
まずは、エクセルやスプレッドシートで売上管理を行う方法についてご紹介します。
エクセルで管理する場合、売上管理に必要な項目を自分たちで設定する必要があります。
最低限、下記の項目は必要です。
- 取引番号
- 取引日(販売日/契約日)
- 顧客名
- 商材名
- 単価
- 個数
- 売上金額(単価×個数)
- 原価
- 粗利(売上金額-原価)
エクセルで売り上げ管理する方法について詳しくは、下記の記事もご覧ください。
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エクセルで売り上げ管理するメリット
エクセルで売上管理を行うメリットは、以下の通りです。
- 追加費用なしで行える
- 使い慣れたエクセルで管理できる
- 自社に合わせたカスタマイズができる
- 関数を入れておくだけで自動で計算が可能
追加費用なしで行える
Officeを導入していれば、エクセルの利用に追加費用はかかりません。
売上管理を行うための専用ツールなどを導入する必要もなく、新たに費用が発生しないというメリットがあります。
使い慣れたエクセルで管理できる
新しいシステムを導入するとなると、1から使用方法を覚え、ツールに慣れる必要がありますが、エクセルは普段から業務で使っている人が多く、馴染みがあるのもメリットです。
また、インターネットで検索すれば、どのような関数を使えばいいか、表の作成方法などの情報が簡単に見つかるのもエクセルのメリットだと言えます。
自社に合わせたカスタマイズができる
企業によって商材に関するナンバリングや商材名、その他に商材を判別する数字や記号などが複数個ある場合もなど、エクセルだと自社でカスタマイズして対応することが可能です。
パッケージタイプの売上管理システムの場合だと、ある程度、決められた表や項目しか使用できないこともあります。そういった面では、エクセルを使用する方が柔軟な対応が可能です。
また、表を作成した後に項目を追加・削除することも可能です。
関数を入れておくだけで自動で計算できる
エクセルの場合、シートを複製するだけで新しい月の管理シートが作成できます。そのため、あらかじめ作っておいた管理表に関数を組み込み、日付、金額のRawデータを記入するだけで、原価計算や粗利などを求めることができます。
また、エクセルの関数を活用するだけで、表の作図や複雑な計算、分析も可能です。
エクセルで売り上げ管理するデメリット
売上管理をエクセルで行うデメリットについてもご紹介します。
売上管理をエクセルで行うデメリットは以下の通りです。
- 外部システムとの連携ができない
- データ量に限界がある
- 共同作業ができない
外部システムとの連携ができない
1番のデメリットは、自社で使用している在庫管理システムや販売管理システムとの連携ができないことです。
売上管理システムの場合、外部システムとの連携ができるものが多く、自動で売上管理表に集計してくれます。しかし、エクセルは連携ができず、全て手入力もしくはデータをインポートする必要があります。
またエクセルのインポートを行ったとしても、形式や表示順など整える必要もあるので、管理を行う工数は多くなりやすいです。
データ量に限界がある
エクセルで売上管理を行う場合、データ量に限界があります。データ量が膨大になると読み込みが遅くなってしまったり、計算エラーに繋がる可能性が出ます。
エクセルでの売上管理に限界を感じるようになれば、売上管理システムなどの導入を検討してみるのも一つの手段です。
共同作業ができない
エクセルの場合、オンライン上で共同作業を行うにはMicrosoft 365サブスクリプションに加入しておく必要があります。
また共同作業を行わない場合にも、各々の担当者が作業したエクセルファイルを一つにまとめる作業が発生する他、どのファイルがマスターファイルなのか分かりにくくなってしまう危険性もあるため、注意が必要です。
売上管理アプリ|個人事業主やスタートアップにおすすめのツール
次に、売上管理アプリで売上管理を行う方法についてご紹介します。
売上管理アプリは個人事業主向けやスタートアップなど小規模でビジネスを始めた方向けに作られている場合が多いです。入力もスマホ1つで完結するため、パソコンを用意する必要はありません。無料アプリでも分析に役立つ機能やレポート作成機能など、機能面でも充実したものが多くあります。
しかし、一部機能が有料だったり、必要な項目の追加や表の作成などカスタマイズが難しいなど、アプリで売上管理を行う場合は、あらかじめできる事とできない事を把握しておく必要があります。
売り上げ管理アプリで売り上げ管理するメリット
アプリで売上管理を行うメリットとしては以下の通りです。
- いつでもどこでも管理できる
- パソコン不要
- 無料アプリも多い
いつでもどこでも管理できる
売上管理をスマホのアプリ上で行うので、いつでもどこでも入力できるのが売上管理アプリの強みです。
パソコン不要
スマホアプリでの管理なので、いちいちパソコンで入力する必要がありません。パソコン操作に慣れていない方やパソコンを持っていない方でも売上管理できるのがアプリのメリットです。
無料アプリが多い
最近では、無料の売上管理アプリも多いため、必要な機能があるアプリを選ぶことも可能です。
おすすめの売上管理アプリは以下の3つです。
- freee
- Square POSレジ
- Loyverse POSレジ
売り上げ管理アプリで売り上げ管理するデメリット
売上管理アプリで管理するデメリットとしては以下の通りです。
- カスタマイズ性に欠ける
- 機能制限がある
カスタマイズ性に欠ける
スマホアプリということもあり、表や新しい項目を追加するなどできることが限られており、エクセルや売上管理システムと比べると見劣りする部分があります。
機能制限がある
無料アプリの場合、レポート機能や分析機能に制限がかかっている場合があり、これらの機能を利用したい場合は課金する必要があります。
売上管理システム|効率化と自動化で経営を改善できるツール
最後に、売上管理システムで売上管理する方法についてご紹介します。
売上管理は膨大なデータを入力する必要があり、それらのデータを分析して、今後の営業戦略に活かすというところまでが売上管理の業務と説明しました。
つまり、売上管理の本来の目的としては、今後の企業成長のためにどうするべきか、という具体的なアクションを立案・実行することにあります。
そのため、データ入力や分析などをミスなく、いかに効率よく行うかが鍵となっています。
しかし、エクセルなどで売上管理を行う場合、その膨大なデータを手入力する必要があり、分析・戦略立案といった業務に割く時間が限られてしまいます。
また、入力時にミスが発生すると、分析の精度が落ち、今後の戦略に大きな影響を及ぼす可能性があります。
そこで、この課題の解決策として、売上管理システムを活用するという訳です。
売上管理システムで売上管理するメリット
まずは売上管理システムのメリットについてご紹介します。
売上管理システムのメリットは以下の通りです。
- データ入力の自動化
- 業務に合わせたカスタマイズ
- 売上管理に対するサポート
- エクセルから移行しやすい
データ入力の自動化
売上管理システムの多くが外部システムとの連携が可能で、手作業で行われていたデータ入力業務を自動化できます。
データの手入力は、単純作業でありながら人為エラーが起きやすいため、人が行うよりもシステムで自動化した方が効率的です。
データ入力の自動化だけでも、売上管理システムを導入する大きな利点と言えます。
業務に合わせたカスタマイズ
業務に合わせた項目の追加によって管理が効率化され、求めていた管理体制が可能になります。
また、分析に使用する表の作成など、生産性の高い業務に費やすためのサポートをしてくれます。
売上管理に対するサポート
売上管理システムを導入すると、ベンダーのサポートがついてくることもあります。彼らは売上管理に関するプロなので、自社の売上管理体制に不安や、システムの活用方法などを相談することができます。
エクセルから移行しやすい
売上管理をエクセルからシステムへ移行する際は、過去使用していた売上管理のエクセルファイルをシステムにアップロードすることで、過去のデータもシステム上で確認することができます。
売上管理システムで売上管理するデメリット
売上管理システムを導入するデメリットについてもご紹介します。システムのデメリットは以下の通りです。
- 費用がかかる
- 初期設定が必要
費用がかかる
売上管理システムを導入する唯一のデメリットは、費用がかかることです。
いままでエクセルや売上管理システムアプリの無料機能内で管理されていた場合、コストをかけずに売上管理ができていたと思いますが、システムを導入する場合は月額費用や初期費用がかかります。
売上管理システムによって金額は異なるので、一度、気になったサービスに問い合わせてみると良いでしょう。
初期設定が必要
売上管理システムを導入したら、これまでの売上管理方法からデータを移行したり初期設定が必要になったりします。
初期設定では、項目の追加や商品番号などを登録する必要があります。導入前までに必要な追加項目など、売上管理システムを移行する際のタスクを洗い出しておくことで、抜け漏れを防ぐことができます。
『キャムマックス』でできること
上記のような売上管理システムの条件を満たしているのが、中小企業向けERP「キャムマックス」です。
キャムマックスは、有形商材の販売に特化したERPで、購買管理から販売管理、EC・店舗管理、経費精算、税務会計、清算管理、WMS・在庫管理まで、バックオフィス業務に必要な機能をすべて搭載しています。
必要なデータは、各部署の担当者に依頼することなく、必要なときに取り出せます。
売上管理機能
キャムマックスの売上管理機能では、EC・卸においてピッキングで消込んだ明細や、店舗のPOS連携による売上を計上し、全ての売上を一つの画面で閲覧できます。
また、部署別の売上を確認したり、店舗別の粗利率を算出したりと、柔軟な検索条件によりリアルタイムに欲しいデータを表示し、多角的な分析が可能です。迅速な経営判断を支援します。
ほかにも、次のような売上管理に便利な機能をご利用いただけます。
- 送り状番号連携で顧客に出荷完了メールを送信
- 返品や値引処理で売上・粗利、請求、在庫なども適正に管理
- 納品書レイアウトを自由に作成(※クラウド帳票ツール「LinkPrint CLOUD」との連携が必要です)
また、売上管理に関する次のような課題を解決できます。
「前日の売上や入荷予定情報・在庫情報を出力して、エクセルで発注検討資料を作るのに手間がかかっている」
「仕入先(メーカー)から直接得意先に配送する受注があり、受注/発注をそれぞれ登録し、売上/仕入をそれぞれ処理しなければいけない」
「輸入諸掛を在庫金額や売上粗利に反映したい」
まとめ
方法 | メリット | デメリット |
---|---|---|
エクセル | 費用がかからない。カスタマイズは自由だが作成には関数などの知識が必要 | データ量に限界がある、共同作業が難しい |
アプリ | 無料なものも多く手軽に始められる | カスタマイズ性が低い、機能に制限がある |
システム | データ取得も自動で行うため手動入力によるミスや手間もなく、外部システムとの連携も可能 | 費用がかかる、導入にやや時間を要する |
今回は売上管理の本来の目的を詳しく説明した上で、いかに効率よく売上管理を行うかについてご紹介しました。
売上管理方法は「エクセル」「アプリ」「システム」の3種類あるとご説明しましたが、それぞれにメリット・デメリットがあります。
今回の記事を参考に、それぞれのメリットとデメリットを理解し、「企業が抱えている課題を解決するにはどの方法が一番適しているのか」を基準に、売上管理方法を選択していただければ幸いです。
FAQ(よくある質問)
Q1. エクセルで売上管理を行うメリットとデメリットは何ですか?
A:メリットは既に使い慣れたツールであることや、追加の費用がかからず自由にカスタマイズできる点です。
関数を使って自動で計算もできるため、簡単に売上データを管理できます。
デメリットとしてはデータ量が増えると動作が遅くなったり、外部システムとの連携ができないこと、そして共同作業が難しいという点が挙げられます。
Q2. 売上管理アプリとエクセルの違いは何ですか?どちらが良いですか?
A:売上管理アプリは、スマホ1台で手軽に管理でき、いつでもどこでも入力やチェックが可能です。
特に個人事業主や小規模なビジネスに向いており、無料で使えるものも多く存在します。
エクセルはカスタマイズが可能で自社の業務に合わせた独自の管理ができますが、データの手入力や管理の手間が増えることもありますので、ビジネスの規模や管理の複雑さに応じてどちらが適しているか選ぶのが良いでしょう。
Q3. 売上管理システムを導入するメリットは何ですか?
A:売上管理システムを導入するとデータ入力が自動化され、外部システムとの連携も可能になります。
これにより人的ミスが減少し管理業務の効率が大幅に向上します。また、リアルタイムで売上データを分析することも可能です。
Q4. 売上管理で効率を上げるにはどの方法が最適ですか?
A:企業の規模や業務内容によって異なりますが、手動で行うエクセル管理は小規模なビジネスには向いています。
一方、データ量が多い場合や複数のシステムを使用する場合は売上管理システムを導入すると効率が大幅に向上します。自社の業務に最適なツールを選ぶことが重要です。
この記事を書いた人
下川 貴一朗
証券会社、外資・内資系コンサルティングファーム、プライベート・エクイティ・ファンドを経て、2020年10月より取締役CFOとして参画。 マーケティング・営業活動強化のため新たにマーケティング部門を設立し、自ら責任者として精力的に活動している。