在庫評価とは?適した方法選択と正しい管理が重要性
在庫評価とは、会計用語では棚卸資産評価とも呼ばれ、決算時に手元にある在庫の金額を決めることを意味します。在庫の仕入れ価格が変動することが多いため、様々な評価方法の中から選択することになります。正しい在庫評価ができるように確認していきましょう。
在庫とは
在庫とは、企業や店舗などが保有している、商品や原材料などの物品のことを指し、会計用語では「棚卸資産」とも呼ばれます。在庫は、生産や販売に必要な物品としてや、需要の変動に対応するために保有されます。
たとえば、小売店が販売する商品や、工場が製造に使用する原材料、製品の仕掛品(未完成品など)や完成品などが在庫となります。
在庫評価とは?
在庫評価とは棚卸資産評価のことを表しており、企業が所有する在庫の価値を決定することを意味します。
決算時に在庫を棚卸資産として会計帳簿に仕訳しなければならない決まりになっているため、企業はその金額を計算する必要があります。
ただ、在庫評価には様々な方法があり、この方法によって企業の利益や負債、純資産などが大きく影響を受けるため、企業は慎重に在庫評価の方法を選定して実行しなければなりません。
在庫評価方法の申請について
会計に大きな影響を与える在庫評価方法は、通常普通法人を設立した年度の確定申告時までに、どの在庫評価方法を使うか申請する必要があります。
もし申請しない場合には、自動的に「最終仕入原価法」が選択されることになっています。
詳しくは国税庁のページでご確認をお願いします。
また、法人設立したばかりでよくわからないからといって、一度届けた方法を頻繁に変えることは認められません。専門家に相談して最適な方法を決めるようにしてください。
在庫評価額算出方法の種類
在庫評価額を算出するには大きく分けると原価法と低価法の2種類あります。
低価法はそのまま在庫の取得価額と評価額のうち低い方を採用するという方法です。一方、原価法には多くの方法が存在しますので、その主な種類をご紹介します。
最終仕入原価法
最終仕入原価法は、在庫の仕入価格を常に最新価格に更新し、在庫評価額を算出する方法です。つまり、最後に仕入れた商品の価格で算出されます。
この方法は、簡単に計算できるのが特徴ですが、仕入価格の変動が激しい場合に使用すると、在庫評価額も大きく変動することになり、実際の額と乖離してしまうというデメリットがあります。
個別法
家庭での家計簿と同じように、一つ一つの商品ごとの取得価額を合計する方法です。在庫を数えられるほどの小規模企業なら良いですが、扱う商品数や種類が多い企業では手間がかかります。
先入先出法
先に仕入れた金額のものを先に販売したと仮定する方法で、販売するたびに在庫評価が可能です。
たとえば100円で10個、150円で20個仕入れた後に20個販売した場合には、売上原価は100円x10と150円x10を合計します。
総平均法
期首残高や仕入商品の合計金額を個数で割って平均値を出し、その値を元に在庫評価を行う方法です。
たとえば、期首残高が50個で合計1万円、仕入数量が50個で合計2万円、期末在庫が40個なら、まず1万円と2万円を合計して3万円を合計数の100個で割り、1個当たりの単価300円を出します。期末在庫が40個なら、100個-40個で60個売れたことになり、単価300円x60個=18,000円が原価となります。
ただこの方法は、期末にならないと評価できないというデメリットがあります。
移動平均法
先ほどの総平均法を期中でも可能にしたのが移動平均法です。現時点までの平均値を元に在庫評価を行います。
期中でも評価できるという反面、仕入れのたびに計算する必要があるため手間がかかります。
売上還元法
販売価格の何割にあたるのか、グループごとに割合で在庫評価を行う方法です。たとえば、販売価格が1,000円で、そのうち6割を在庫価格とする場合には、在庫評価額は600円になります。
一見簡単そうですが、部品など直接販売しない在庫には適用できないため、完成した商品を仕入れて販売している卸売業や小売業でしか使えないのがデメリットです。
在庫評価損・在庫評価益とは?
上記のような方法で在庫評価を行った結果、棚卸資産の金額が決まりますが、取得価額と評価額が乖離している場合、評価損や評価益が生じます。
ただし、「損」や「益」とついていても、実際に損をしている、または利益が出ているという意味とは異なります。また、計上できるかどうかは税法によってそれぞれ以下のように定められています。
在庫評価益
在庫評価額の方が大きい場合は、その分実際にその在庫を販売する際の利益になり得ますから、決算時には特別な仕訳は行わない決まりになっています。
在庫評価損
在庫評価損は在庫評価替とも呼ばれ、在庫取得時の金額より評価額が低くなってしまった場合を表します。
在庫評価方法に原価法を採用している場合には、在庫評価損を限られた条件下でのみ計上することができます。
その条件とは①災害による著しい損傷、②著しい陳腐化、③その他準ずる事実の発生となっており、今後在庫を販売することができないようなケースに限られます。詳しくは、国税庁のページをご確認ください。
在庫評価を正しく行うためには
このように在庫評価は、会計や経理の専門家の力が必要となるくらいに複雑ですし、法律にもかかわってくる問題でもあります。
たとえ規模が小さい企業でも、適当に済ませるわけにはいきません。
在庫評価を正しく行うためのコツは以下になります。
正確な在庫情報を収集する
在庫評価においては、正確な在庫数量や製品の購入価格を把握することが重要です。
そのためには、在庫の管理方法を確認し、周期的な在庫点検の実施が必要です。
また、取引先からの請求書や入荷時の納品書など、正確な情報を収集しなければなりません。
システムを活用する
このような管理を手作業で行うのは至難の業でしょう。
しっかりやっているつもりでも、人の手によるミスは避けられないからです。
在庫管理システムや在庫管理機能が付いたERPシステムなどを導入することで、適正在庫の把握が可能となります。
ERPシステムであれば、財務会計もまとめて管理できるため、在庫管理機能から棚卸や在庫評価を正しく簡単に行うことができるようになります。
キャムマックスは在庫評価ができるクラウドERPシステムです
キャムマックスは中小企業向けに開発されたERPシステムで、在庫管理機能はもちろんのこと、経理や会計業務もひとまとめに管理できるのが特徴です。
そのため、日々の在庫管理から正確な在庫評価を行うことが可能です。
在庫管理システムと会計システムが分かれている場合、連携が難しかったり、連携できても在庫評価が難しいというケースもありますが、キャムマックスならその心配はありません。
在庫評価や棚卸に課題を感じている企業様は、ぜひ一度ご相談ください。
この記事を書いた人
下川 貴一朗
証券会社、外資・内資系コンサルティングファーム、プライベート・エクイティ・ファンドを経て、2020年10月より取締役CFOとして参画。 マーケティング・営業活動強化のため新たにマーケティング部門を設立し、自ら責任者として精力的に活動している。